第四十二回 空と大地を貫くの。


 ――それは一筋の閃光。青白く光るサンダーボルト。その後を飾る霧状の雨。



 そして、その霧の中から怜央れお君が目の当たりに……


「ビショ濡れ……」


「服、乾かすのに丁度いいな。それに、やっぱりその方が似合うよ、葉月はづき……」


 丸い眼鏡を掛けずに、そばかすをも晒す僕の素顔……を見るなり、彼はそう言ってくれた。お下げもしなくて、首筋を覆って背中に少し掛かる程度の髪。ちょっぴり気になる癖のある髪だけど、それさえも含まれている。そして一糸まとわぬ姿までも……



 全部を見ているの。

 全部を知っちゃうの、多分これから。


 デッサンは終わったから、お互いキャンバス上の。ここからが醍醐味と思われるアクリル絵。アクリル絵と謳うからには使用する絵の具は、アクリル絵の具。


 スーッと通る水彩に似た匂い。色の基本は三色で、赤、青、黄。カラー写真でいうならね、マゼンタ、シアン、イエロー。そのフィルターが重なることでカラー写真の現像ができるというの。詳細は、やはりやってみること。……そのお話は誰から聞いた?


 銀塩写真については、早坂はやさか先生がチラッと言っていたから。


 銀塩写真のカラー補正をした友人がいると言っていたから。かつては同じ会社に在籍していた若かりし頃があったという。……まあ、お話は少しばかり脱線したけど、絵の具のことに関しても通づるから無関係ともいえないの。原理を知ったのなら、その三色から発展させていく高度成長期のように。僕は昭和と呼ばれる時代には姿形もなかったけど、最新技術により、その時代を文字や写真の上なら、浅くは知ることができるから。


 バブル経済と呼ばれる時代は、その後に不況を齎した。不況は付き纏うの、平成時代と共に……しかしながら、○○○ミクスで安定化は図られたようだ。そして令和となった近日この頃、混沌とした今日この頃だけど、僕らはもうこの閃光のように迷いはなしだ。



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