第四十三回 重なる色は深々と。


 ――色には重なる性質がある。


 僕のアクリル絵は二度とない色彩で飾られる。



 爆音立てるサンダーボルトと、水蒸気から自由の矢と化した雨の激突は、僕の裸の心と身体に至るまでに激しきビートを刻んで、クラシカルなイメージからロックアレンジと趣を変えた。縁するものは多数……ギアが噛み合うような感覚。走る筆先から流れるアクリル絵の具の色。そんな僕に同調してくれる怜央れお君。心がリズムに踊るの。



 ――色はカメレオン。


 状況に応じて変貌を遂げる。あらゆる環境にも順応し、進化していく。優柔不断とは異なる趣。故に二人は異色なの。全裸だからハッキリする女の子と男の子の違い。身体の違い。そして根本的な思想ともいえる違い。違うからこそ興味を示す永遠のテーマ。


 高い湿度に汗ばむ身体……


 思春期だから余計に、興奮する胸の鼓動やトキメキなど。


 向かい合うお互いの、全裸……デッサンの時に見てきたはずなのに、それはまたイメージを書き換えて、形をも微妙に変える。そこに生まれる興味も自然に起きるから、包み隠さず一枚の絵に、鮮明な鏡のように描きゆく、お互いがお互いを手段は描くこと。


 正直に受け止めるからこそ、ありのままで、


 喩えどんなことでも、ありのままを描くの、心に映った被写体を。好奇心や興味も、思春期であること自体も、一枚の絵に晒す覚悟。戦慄を覚えながらも。


 怜央君は僕の裸に興味を持って、


 僕も怜央君の裸に興味を持って、お互いを描くルーティンは開始される。……でも、進化は起きる。昨日の色とは違う今日の色。重なる色は深みを増してゆく。


『青は藍より出でて藍より青し』……その言葉の意味を五感を持って刻んだのならば、その時には、僕らの求めていた色に限りなく近づくと思うの。映え渡る虹のように。



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