第八章 ――絵画。

第三十六回 芽生えるロマンス。


 ――それは、もう二人だけの世界。知りたいことだって、もっと深みを増すから。



 そのキッカケとなったのは、ウメチカ戦……

 僕が十三年生きてきて印象に残った世界……


 その世界観の中に見たの、私学展に出展する絵画のイメージ。だからこそ、ここからまた出発だ。描く絵も振り出しに戻る。せっかく煮詰まった構想だったのだけど……


 怜央れお君は、御了承してくれた。


 夏休みにも突入したのだけど、僕に付き合ってくれると言ってくれた。僕につき合うとね、夏休みも……返上とまでは言わないけど、減っちゃうよ、それでもいいの?



「僕らはパートナーだから、葉月はづきの思った通りに付き合うよ」


 ……男に二言はないとのことだ。


 見た目とは異なり、きっと怜央君は本当の男だと、僕は太鼓判を押すの。だったら僕もまた魅力的な女の子になる。太郎たろうさんや千佳ちか先輩に負けないような二人になる……


 そして今の舞台は、ここなの。


 ――芸術棟。その二階のアトリエ。視覚から楽しめるお外との一体感。特殊なガラスでできた壁となるビッグなウインドウ。しかしながらお外からは見えない、マジカルなウインドウ。それでもって紫外線からも身を守る仕掛けまでが施されている。



 かつて令子れいこ先生の時代に行われたという伝説の合宿……


 再現までは時流の加減もあり不可能な部分は多々あるが、できる限り近づきたい。キャンバスに描くものの自由は守りたい。体操着で覆う、お互いの姿は……


 ここから先は、体操着から脱皮する一糸まとわぬ姿。裸の星野ほしの葉月だから。……もっともっと見てほしいから怜央君に。「どう……かな?」と、精一杯の一言。絵を描くのだからと思いつつも、胸の高鳴りは抑えられなくて、顔も熱くなってきたの。



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