第三十七回 隔たりのない裸体。


 ――だからこそ必要なの。


 脱皮することが今この時、地より湧きたる蝉のように。



 七年間の地中から、最も輝ける時を迎えるため地上へ。七日間という短い時間に人生の集大成をここにという心意気。そして次の世代へ語り継ぐために……


 僕は大好き、葉月はづきが。


 それは僕と同じ名前の月。誕生月だから……色々な意味も踏まえて。



 今はまだ十三歳の僕。全裸の僕をマジマジと見る怜央れお君。固唾を呑む音も、ハッキリ聞こえるの……見てほしいけど、これから彼のモデルになるのだから、決めていたことだから前から……すると、響く彼の声。静寂の中に於いて……


「眼鏡、取ってもいい? それからお下げ、解いても……」


 とっても近い怜央君の顔。眼鏡の蔓にそっと手がかかる。でもそれは、やっぱり、


「あっ、ちょっと待って。外しちゃうと……そばかすが目立っちゃうの。せめてお下げだけなら解いても……」と言ったのだけど、怜央君は外しちゃったの、僕から眼鏡を、


「取り上げちゃうよ、そばかすも愛らしいし、とっても可愛いから」


 ――見られちゃった、素顔の僕。


 全裸よりも恥ずかしから……「大丈夫、すぐ慣れるから」なんて怜央君は言うし。

 だったら、


「僕だけ裸じゃ不公平だ。眼鏡も取っちゃうから。怜央君も裸になって、僕の前で」


 と、言い放っちゃった。男の子に脱げだなんて、同い年の同じ学年の、同じクラスの男の子の裸……それも僕と同じように全部。でもでもでも、僕も描くから、彼を。


 顔は、女の子の僕より綺麗……


 肌も美肌と呼べるほどで。でも、それとはギャップもありそうな筋肉。アスリートのような……逞しき身体。堂々と体操服に奥にあった裸の身体が、僕の目の当たりとなった。



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