第三十五回 芽生える未来地図。


 ――それは最終決戦にあった。第二次ウメチカ戦の最終日、最終決戦の中に。



 とりとめのないお話が続く僕のエッセイだけど、……何もかもが初めての世界。そして初めての出来事たちで溢れているから、まだ千佳ちか先輩のようなエッセイは綴れない。


 御先を見据えた目標。……一年先とか。


 それは千佳先輩と太郎たろうさんのような関係をも含むから、なら、僕のパートナーはやっぱり怜央れお君ということになる。覚えることも山積みだ。℮スポーツも、絵を描く傍らで。それにエッセイも。思えばやることは増えているの。入院していた時よりも、それは病気していた時よりも、それよりも前よりも……今の方が、初めての充実感。



 今日の帰り道。つまりは第二次ウメチカ戦の最終日の帰り道。お空は黄昏る。


 そして明日からは、また普通……


 って、明日から夏休み、いやいや既にもう突入していた。こうして今も、怜央君と一緒にいる。同じ電車の中で、前から数えて七両目。僕は座席。僕の目の当たりで、怜央君は立っていた。何を語ったらいいのだろう? 目は口ほどにものを言うそんな様子で。


 僕は思うの、このウメチカ戦を通してもっと……


 もっと怜央君のことを知りたいと思った。僕の場合は何でわかり合えるのだろう? それは絵。私学展に挑むアクリル絵の中にあると思うの。……であるなら、


「怜央君、僕と一緒に……その絵を描かない?」


「ン? 絵なら一緒に描いてるだろ?」


「……じゃなくて、僕と一枚の絵。僕と同じキャンバスに描いてほしいの」


 と、その途端、一気に、


 または一斉に、僕らに視線が集まったの、周りの乗客の視線を。カーッと顔から火が出そうに熱くなる。少し俯いた僕の肩をポンと手を置いて、僕がまた顔を上げるなり、


「もちろん。僕ももっと葉月はづきのことが知りたいから……」と、怜央君は言ったのだ。

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