第六章 ――革命。

第二十六回 第二次ウメチカ戦。


 ――その暁を迎えの初陣。燦々と、早朝からの蝉時雨。そして橙色の陽射し。



 昨日までは梅雨と銘され、

 この朝日により、確実なる夏が運ばれる。気温も上々で熱中症には注意をだ。



 準備は昨日の夕闇より施された、ママと一緒に。……娘の初の遠出。とはいっても私の鉄道の終点。時間にすれば二十分も経過しない程。それもローカル電車のみで。


 でも、行くのはパパとママと一緒ではなかった。


 可愛い子には旅をさせるのも……と言いつつ、僕と一緒に行くというママを、パパが説得したそうなの。その行先は、もちろん『第二次ウメチカ戦』が行われる会場。


 僕にとっても初めての場所。


 それに長時間が予測されて、心配ないというのが嘘と言えるほどの僕の体力。でも、思い出してみて。これまで培った絵を描く時の粘り。……もう充分に鍛えられているの。



 それでも油断はなし。細心の注意を払いながらの念密な準備。スマホで下調べも施しながら。そして何より……怜央れお君が迎えに来てくれるの。歩きには変わりないけど、誰かが傍にいるだけでも、頑固で強がってしまう僕でも、本当は安心できるの。それに、怜央君なら僕の体の事情を知っているから、少し甘えられるから……安心なの。


 そして来る出発の刻。


 玄関から奏でるチャイムの音。ママは怜央君を迎え入れた。この短期間だけれど、怜央君はママに気に入られているようで、僕を待つだけではなく御茶を嗜む始末なのだ。


 だからママは安心して、


「手のかかる子だけど、葉月はづきをよろしくね」と、出発間際に言ってくれるのだ。


「任せてください」と、威風も堂々たる返事だ。怜央君は、やはり獅子レオを司っているようにも思えた。名は体を表すように、見掛けによらないその奥で、発動しているようだ。



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