第二十五回 きっと、永遠の光。


 ――明ける夜。そして百面相よりも、もっと表情豊かな朝の光。



 喜怒哀楽も巧みで、快晴の喜びに怒号の稲妻。哀に染まるセピアな雨とステップ奏でる季節の調べ。どれも生きている証明なの。僕は今も共存している。



 もっと自然と共存していたなら、

 こんなにも自然が、不自然になっていなかったと思えるの。


 だから僕は、せめて絵の世界だけでも緑を大切にしたいの。生い茂る緑の世界観の中へと身を委ねる。心が原始へ帰ることができるように……そのメッセージを伝えたいの。


 かつて『愛は地球を救う』というテーマを掲げた二十四時間の番組。


 その中にあったアニメは、幼き頃の僕の心に残っているの。……その日は、ちょうど雨の日だった。今日のこの雨とよく似た雨。その奏でる調べまでよく似ていた。


 今日は日曜日。


 雨がシトシトな日曜日。……僅かながらの降りかもしれないけど、僕にはその時の記憶を呼び覚ますのに充分な、お時間だった。それは永遠の光となるの。


 描きたい絵は、その時に見た光景なの。


 僕はきっと、その絵を描きたいから病気に勝ったのかもしれない。思うに大義名分よりも使命感溢れる理由よりも、……それは、それ自体が使命なのだから、その一念が何よりの理由なのだ。令子れいこ先生も同じだったようなの、僕と……



 最後の絵と決めるも、大切な人と描いているうちに、

 もっともっと絵を描きたくなったの。もっともっと沢山の絵を描きたいの。


 ……生と死の間で、潜在する意識の中で、そう思ったそうなの。僕はその思いを叶えるために、自由な身体となって蘇った。あり得ないことだと思うけれど、僕も一度は心停止ていたそうだ。そして奇跡――令子先生と同じように、僕も生まれ変わったそうなの。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る