第二十二回 だからこそ交渉技。


 ――それを磨いていた怜央れお君。僕はいつしか、彼と一緒にいる時間が楽しく思えた。



 春はまだ、彼の存在は薄かった。同じクラス、そして同じ学園にいる、その程度。しかしながら夏、彼の存在は濃くなり、彼からパートナーになってほしいと告げられた。


 もちろん赤面効果は抜群、

 一先ずシャワーで火照る身体を、ササッと冷ましたいと思った。


 パートナーと言っても、今はまだウメチカ戦のパートナーに選ばれた、その程度。



 ……心では素直に、了解していた。


 今でなく、もう少し前から。不公平の名のもとに、少しずつ公平となることを、それはつまりこのアトリエで僕らが、お互いを描き合うことを決めた日からだ。それでもまだ内緒にしているの、僕の脳内に、そっとしまってある。


 この体操着を、脱いでからの……


 すべてを見せる時に、僕らは真のパートナーになるの。それは、この第二次ウメチカ戦が終わった暁。場所はここ、アトリエと決めている。



 ……その時になったら是非、


 怜央君に描いてほしい。十四歳になる前の、十三歳の全裸の僕。僕もまた描くの。君の肖像画を。西洋絵画風なのは令子れいこ先生譲りだけれど、イメージは古代ギリシャなの。


 第二次ウメチカ戦は、きっと僕らの中では一種のオリンピック。


 無観客にならぬよう、細心たる注意が必要だ。――しかしながら、℮スポーツといっても僕はしたことがない。なぜ怜央君は、僕をパートナーに選んだの?


「心配ないからね。葉月はづきはモリオカート部門で頑張ればOKだから。……今年から、親子で楽しめるようにと、モリオカートを始め、様々な部門が加わったんだ。恵比寿えびす君は梨花りか先輩とバンプラ部門で火花を散らして、僕は千佳ちか先輩と太郎たろうさんに挑む。やっとだ」



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