第十七回 事情は二乗と考える。


 ――その根拠は、この度の梨花りか先輩と恵比寿えびす君の事情にあった。



 二人とも、可奈かな先輩を巡った事情。可奈先輩に彼氏ができたという件で、寂しさを抑えて、その門出を笑顔で応援しようとする梨花先輩と、寂しさが抑えきれずに泣いちゃった恵比寿君。……そのことを、都築つづき君が、そっと教えてくれたから。



 聞いちゃいけないことだったの?


 でも、都築君は聞いた。本人から。……恵比寿君のことについて語ることとなる。


 恵比寿君は可奈先輩とは姉弟のような関係で、それは可奈先輩のお父さんの、お仕事の関係で知り合いとなった。週末は、お泊りする機会も多かったという。御飯も一緒に食したし、御風呂も一緒に入る仲だったそうだ。……あっ、でもそれはね、可奈先輩が小学五年生までの話。そこからは、まあ……普通のお友達のような関係になったみたいで。



 そしていつからだっただろうか?


 可奈先輩に大好きな女の子ができたのは? ……そのことを知った当時は、梨花先輩と千佳ちか先輩がミックスされていたようで、男女両刀遣いのとんでもないキャラになっていたようだけど、恵比寿君の脳内では……



 そしていつからだっただろうか?


 可奈先輩が百合ではなく、普通の女の子のように男の子に恋に落ちたのは?


 それは僕のハートがキュンとするほど、可奈先輩が綺麗に見えた。いつものマシンガントークのイメージとは異なった大人っぽい、素敵な女性に……浴衣姿の夜、月明かりに見たその姿。僕もいつか、そんな素敵な女性になりたいとの思いが込み上げてきたから。


 恵比寿君が、その夜に泣いちゃった心情を、言葉にはしないけど、……都築君を通して察することができた。二人の事情を二乗にして、心の中では蠢いていた。



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