第四章 ――通過。

第十六回 ウメチカに習うから。


 ――それはそれは、千佳ちか先輩に習って。



 気にかけてくれたの。僕だけではなく、都築つづき君や恵比寿えびす君のことも。僕は一足先に、屋上から昇降口を伝って、その最中で彼らと……バッタリ会ったの。お休みと思われていただけに鳥肌と、見られた浴衣姿が恥ずかしく、「何でいるの?」と言い放ったの。


 でも、ちょっぴり後悔……


 恵比寿君は何やら泣いている様子だったの。

 それを都築君が、聞いてあげながら、励ましてくれていたの。



 恵比寿君は、可奈かな先輩とは幼馴染で、まるで姉弟のような関係だったというの。だからこの間の事件が起きたの。恵比寿君が千佳先輩に誹謗中傷SNS……可奈先輩に、というよりかは梨花先輩にこっ酷く怒られたと、専らの噂だ。いやいや千佳先輩のビンタで大泣きしたそうで……思ったの。千佳先輩を怒らせると、とっても怖いことを。


 男の子が泣いちゃうくらいだから、


 僕だと……ねえ、そう思うでしょ?


 あっ、本題だったね。恵比寿君が泣いた理由。……きっと梨花りか先輩と同じだと思える。


 お友達を越えた可奈先輩と梨花先輩の仲は、百合にまで至ったそうなの。真剣に真面目なまでにお友達が欲しかった梨花先輩は、恋愛にも差し掛かる程の情熱を注いだ。


 可奈先輩と波長が合ったのだ。百合という波長が……


 そして梨花先輩が百合な理由は、太郎君とのお別れを招いた転校が原因のようなの。初恋の子が……何と太郎君で。太郎君は梨花先輩と再び会う前に、千佳先輩と出会った。


 梨花先輩と千佳先輩……


 本当に瓜二つなほど似ている。彼女たちが双子ということを知らなかったら、見分けがつかないのだから、それは仕方もなく。或いは運命としか言いようもないこと。


 だから、この後に続くお話も、もしかしたら運命的なことなのかもしれない。



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