第二回 芸術部の懲りない面々。


 ――かつては四人。芸術部の草創の頃。僕もその中の一人だった。



 長きに渡る病気……自由のない身体の車椅子生活。十歳の頃から。そして十三歳を迎える前に、最期を覚悟しての冒険に臨んだ。それが芸術部……だった。


 そこで出会えた素敵な面々……

 それでいて懐かしき感覚も……


 病気になってから、正確に言えばもう忘れかけていたけど、僕が引っ込み思案になった原因。それはあの人の、……記憶から消えていた言葉。ニューアンス的には『もう構わないで、鬱陶しいの』との言葉。僕は慰めていたのだと思うの。お母さんと喧嘩して家を飛び出したって言っていたから。それからもう、会えなくなった。


 あの人、今だから分かったことだけど、


 僕はこの芸術部で再会していた。星野ほしの千佳ちかという、あの人と。


 かつては男勝りなほど、活発な僕……

 その面影が消え、引っ込み思案となり、思ったことも言えず、クラス替えでお友達に話しかける言葉も、脳内で真っ白になって、記憶が消えた半面で、沸々と恨み募って……



 千佳先輩を憎んだこともあったの。


 入院中に沸々と……だから、ある一面では、千佳先輩をぶん殴るために復活できたのだと思えるし。けれど、その反面では、また会えたことの縁深きに感謝の思いも溢れ……


 なぜなら、

 千佳先輩は、僕にマイレボリューションを起こした人だから。


 ……だから、ぶん殴るよりも、動くようになったこの両足で、一歩ずつ歩んで行こうと決心できたの。なぜなら千佳先輩のエッセイの『ウメチカ』に、僕を前向きにさせる理由が、数え切れない程あったのだから。善の知識に満ち溢れている世界観。――僕は、そこに憧れて、今宵もまた、葉月はづきのエッセイである『ハヅキミクス』を綴っているのだから。



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