第2話 アフターコロナとは何ぞや?~何人までを生贄とするか~
8月7日現在、コロナワクチン接種の完了者は4000万人を超え(1回のみは5000万人以上)、全国民接種の目途も立ってきた。感染者数、重症者数は増加の一途をたどっているが、ワクチンの有効性からいずれはそれらも減少することが期待される。
いよいよコロナ禍の後の世界も見えてきた―――という所で、問いたい。
一体何を以て、コロナ禍が終わったと定義するのか?
大前提として、新型コロナウィルスCOVID-19の根絶は不可能であろう。元々コロナウィルス自体が変異をしやすい種であり、すでに変異株が次々と出現し、それらへのワクチンの有効性について、悲観的なデータも出つつある。
ワクチンが広まることでコロナ感染率、重症化率は下がることが期待されるが、それでもこの厄介な隣人は、長く今後の人類社会の中で生き続けることは確定的だ。
現在、治療薬についても開発、研究がなされているが、いまだ海の物とも山の物ともいえず、期待することは難しい。
では、根絶できないとしたら、私たちは何を以て新型コロナの流行が収束した、とみなせばよいのだろうか?
そしてもっと言えば 『コロナウィルスによる死者を、何人まで許容する』 のだろうか?
自動車の例を挙げよう。
現在、日本では交通事故により年間3000余人の犠牲者が出ている。しかし、当然のことながら自動車自体を違法として、社会から廃絶しようという動きは一向に見られない(煽り運転や運転中のスマートフォン使用に対する罰則の強化などはあるが)。露悪的な言い方になるが、これはつまり 『自動車の利便性の為に年間ランダムで国民3000人の生命を犠牲にしている』 のだ。
翻って、この論法をコロナや、現在の社会状態に置き換えてみる。
現在、飲み会や外出、県境を跨いだ移動は自粛を求められ、公的なイベント、行事もその多くが制限を受けている(のになぜか、オリンピックは開かれたが)。
だがそれらの公的私的な努力のおかげで、コロナウィルスの拡大はどうにか抑え込めている状態にあると言える。
さて、コロナワクチンが全国民に施された後、これらの制限はどうするべきか?
当然のように解除をする流れにはなるだろう。飲食店はもちろん、観光旅行を心待ちにした人々や、全国大会を目指して部活動に励んできた少年少女。皆がその瞬間を心待ちにしているはずだ。
だが、もし現在の制限を取り払ったとしたら、そこに待っているのは、大規模な感染拡大だ。
もちろん、ワクチンをしていない場合にくらべれば、はるかにその拡大、被害は抑えられたものになるはずだ。
しかし、感染症対策に重きを置いた現状に比べれば、はるかにその広がりは激しいものになるだろう。
さらに言えば、その感染の拡大はコロナウィルスだけの話ではない。
前シーズン、インフルエンザの感染者数は史上まれにみる少なさを記録した。これはコロナ感染との合併を恐れた市民たちによるワクチン接種率の上昇と、現在も行われている対コロナ用の感染対策が、インフルエンザに対しても有効だったためであるとされている。
つまり、現状のコロナ対策は、インフルエンザをはじめとして他の感染症にも有効であり、つづければコロナをはじめあらゆる感染症による被害者を減らすことができるということであり、そして言い換えれば、これらをやめるということは、やめなかった場合に比べ、感染症による犠牲者数が増える、ということなのだ。
さて、その上で問いたい。
何人までなら、犠牲にできる?
飲み会や、旅行や、全国大会の為に、見ず知らずの人や、あるいは身内、あるいはあなた自身に、どれだけの犠牲を強いることを許容する?
もちろん、私は全国民のワクチン接種後、規制の解除を行うことについて反対を唱えるつもりはない。
だが、少なくとも熟慮と決断は必要になるとは思っている。
with コロナ という言葉が唱えられて凡そ1年。
本当の意味でコロナと共に生きていかねばならない社会のコストについて、真剣に考えなくてはならない時期が、もうそこまで迫っている。
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