第6話 ゲームの真相

 翌日6時、私は起床した。恐る恐る反映された結果が移るタブレットに手をかける。私は、たとえ本性がわかっていても本言及して当てることはできない、私にそんな勇気はない。でも、反映された結果を見なければ…思い切って私は結果を確認した。

 まずはCの私。パスを選択。

 そしてここからが重要になってくる、D、光先輩、Eに本言及、障害者といじめられっ子、予想の斜めを行く回答だが、一つ当たっていた。そう、アリスさんは障害者だったのだ。

 Eのアリスさん、Dに鋭い、これで光先輩は脱落した。

すると、ポイントを使いますか?とタブレットからはい、いいえの選択肢が、これで私が一位になれば全員死刑を回避できる。しかし、このゲームが終わった先には…震えながらはいを選択し、アリスさんの最後の本性を知ることになる。


「えぇっ!?」


 それは性格でも特徴でもない、予想をはるかに上回るものだった。



 モニター越しから決着がついたのを確認した大人5人。

 そこにはA、B、C、D、E、全滅の選択肢があった。


「予想外ねぇ、私は威圧的だからAが一位になると思ってAに投票するべきだと思ったけどガキだと甘く見て全滅に投票したわ、当たったら一億欲しかったわね」


「僕は自分で言うのもあれですけど忠誠心の高い人間ですからね。BはAかE側について利用されるだけされてAかEで迷いましたけどAに投票しましたね、生徒証で顔と名前、年齢、そして忠誠心が高い、って書かれてましたし、威圧的な月山礼さんか独裁的な花野アリスさんに付く気がしてそれ自体は当たってたんですけどね」


「私はきっと子供たちが協力してこの窮地な戦場から抜け出してくれると信じていました、そしてDの空光さんのような天才的なカリスマ性を持つ人に私は惹かれてしまいましたね、優しい未来さんもきっと彼女を勝たせるために全力でこの身を犠牲にしてでも光さんのような方に従うのではないかと思ったのでDに投票しました」


「こういうゲームに歳は関係ねぇ、頭脳がすべてだ、すべてのカギを握るのは間違いなくDだった、だがDはCを勝ち上がらせれば全員死刑を逃れるという術を選んだ、ことはDの予想通りだったんだがな、俺もDに投票しちまったぜ、つっても被ってるから一億じゃなくて五千万しかもらえなかったけどな」


「こういうゲームは頭より弱みに付け込んで人間を利用する方が勝ち目が高い、当然Eに投票したな、物事は上手く掌握できていたがCとDの結束力が強かったな、悔しいがCに投票したものは誰もいないわけか、とりあえず主催者が落ち着くまで待つか」



Eテント

「馬鹿な…光に一つ当てられそして未来にポイントで本性を暴かれ僕は脱落…未来が一位になったということか、僕では見下された人間、障害者でも頑張れば一位を取ることができると救済する力にもなれず最低限の自殺志願の死刑すら実行されなかった、どこで間違えた?どうせ見ている人間は精神障害だから負けたし思い通りにいかなかったのだ、と見下すのだろう、だがもし僕が一位を取っていたらその理論も覆るかもしれない、障害の見方を改めて変える人物が一人でも多く現れるかもしれない、でも僕に一位は敵わなかった、だが逆に天才的頭脳を持った人間にも一位は敵わなかったことになる、忠誠心の高い人間が一位になるのは初めから思い描いていなかったが威圧的人間が一位になっていたならもっと僕たち障害者は報われなかっただろう、未来か、優しい人間に一位を取られるのは幸い嫌な気持ちがしないな、他の本性が気になったがね、だがまだだ…僕には保険がある、全員死刑が終わったと思うなよ」



 あたしは結果を2度見、いや3度見した、凝視しすぎて固まっていたくらいだ。

 今回でCの未来以外の二枠以外すべて埋まった、決着はついた。それよりも驚いたのはアリスの本性一覧だった。


本性

A 生意気 威圧的 負けず嫌い (死刑なし)

B ドМ 忠誠心が高い 変態 ドS×挑発的×暴力的×殺人的×(死刑なし)

C 優しい ??? ??? いじめっ子×人見知り×創造的×家事が上手い×ボクッ子×多重人格者×マイペース×仲間思い×(一位)

D 男喋り 天才的 鋭い 中性的×弱気×病弱×姉×妹×視力が良い×マイペース×(死刑なし)

E 独裁的 自殺願望者 障害者 主催者 お嬢様×貧乏×冷静×嘘つき×弱気×メイド×演技派×プライドが高い×毒舌×理系×文系×運動神経が良い×偽物×孤独×二重人格×狂気的×矛盾×完璧主義者×(死刑なし)


 花野アリス、彼女こそ主催者だったのだ。主催者ということは全員の本性は把握していた?これはアリスに聞く必要があるな。



「おい、アリス、どういうことだ」


 ……


「アリス、いないのか」


 今にも泣きそうな姿でアリスが出てきた。


「や…やぁ…お互い脱落者になったね」


「主催者ってどういうことだ?お前はもともと全員の本性を把握していたのか?」


「把握はしていないよ、そんなのはずるじゃないか、僕はありとあらゆる尖った性質を持つ人間を集めてとしか言ってないからね」


「なら偽性格はどうなる?」


「あれもランダムだよ、お題なしも僕が考えたものじゃないからね」


「追加ルールは?」


「あれももちろん僕は知らなかったよ、ポイントにしても躊躇なく使うつもりだったからね、ただ、面白いルールにしておいてとパパに伝えておいただけさ、絶対に勝てるルールにして勝って何の意味があるんだ」


「さすがに主催者は分からないだろう」


「君も6ポイント使って本性を増やせば絶対にわからないような本性が増えていたのかもしれないね、それに、今回みたいに5ポイントで暴かれれば関係ないことだしそこの調整に僕は関わってないよ」


「ならあの無数の小型カメラは何だ?」


「海利から聞いたよ、確かにカメラが設置してあったね、僕は学校から監視されてるものだと思っていたけどそのカメラを使って監視していたのだろうね」


 主催者なのに何も知らねぇじゃねぇか、それと同時に参加者でもあるから当たり前か。


「君は僕の本性を見てどう思った?」


 真剣に問いかけてくる。


「とりあえず主催者は除くぞ、まずは独裁的、礼と似たような威圧的にも似ていたが人を使うのには長けているとは思ったな、そして自殺願望者、これは予想外だった、パスを三回使えば即死刑の選択を取らなかったわけだからな、それなのに勝とうとしている意図がわからなかったな、だが最後の障害者でわかった気がするな。お前はあらゆる逸材に打ち勝ち自分と同じ存在に希望を与えようとした、違うか?」


「鋭いね、君は」


 すると礼が現れた。


「まさか貴方が主催者だったとは驚きだわ、それにしても障害者だったとはね…」


 礼は同情するような目でアリスを見る。アリスは怒りをあらわにした。


「君のような人間が一番嫌いなんだよ、特にその憐みの目がね、僕が障害者じゃなかったらそんな対応は取らないだろう?僕は君のような威圧的な人間に学生時代の今でもさんざん見下されているからね、君や海利を見下したときは生きているのを実感したよ」


 アリスの言いたいことは分かる。あたしも目立ちたくない人間だ、テストの点数でいい点を取っただけで対応が変わる。逆に悪い点数を取れば見下される。あたしは頭が良いでも悪いでもなく普通でいたいのだ。その点ではアリスと合致している。


「要するに障害者とか関係なしに一人の人間として見てほしいんだろう?」


「君は理解が早くて助かるね、僕は見た時から礼は嫌いだったからね、僕を見下した人間たちにそっくりだ、だから初めのうちは会わないように避けていたよ、結局潰しに行くために自分から会う羽目になったけれどね」


 驚いたように海利が飛び出してくる。


「主催者ってどういうこと?」


「今度は海利か、君の扱いは難しかったよ、やられることに快感を覚える人間だからね、礼に付いていて忠誠心が高い以上礼以上に見下すことを意識したからね、僕には何がどこで快感を覚えるかわからなかったけどその圧倒的精神力には憧れるばかりだ、未来も来てから話そうではないか、主催者については」


 噂をすると未来もやってくる、当然か、主催者なんてとんでもない本性を隠し持っていたんだからな。


「やぁ、優勝おめでとう」


「アリスさん?えーとなにから話せば」


 未来は混乱しているのか戸惑っている。


「僕の一位の夢も死刑の願望も君によって阻まれてしまったけど悪い気はしないな、未来たちは一日目から監視していた、君は紛れもない善人だ、このメンバーの中で一番の憧れであり一番友達としてほしかった、でも僕は自分の二つの願いを優先してしまった結果、対立するしか手がなくなった。君は言葉だけじゃない、本当の意味で優しい人間だ、最後に君のような人間に会えてよかった、直接話した機会は少ないけれどこの絶望が渦巻く世の中にも一つくらい希望があるとわかってよかったよ」


「最後にってどういうことですか?」


「Bはほぼ確実に大丈夫だろうけどCはどうかな」


 遠くから響き渡るエンジン音、飛行機だ。


「とりあえず乗ろう」


 まあ主催者だしな、潔く聞くか。あたしたちはアリスについていく。



 飛行機には何人かの大人の姿があった。


「パパ…」


「よく頑張ったな」


 アリスの頭を撫でているのはアリスの父親だろうか?5人の大人とあたしとアリス含める5人のメンバーは会合する。アリスが父親らしき人物に紙を渡されるとアリスの父親、アリス含めた10人がそろい、アリスは飛行機前で説明する。


「まずはAから投票結果を説明する。今回はCの未来が一位だったのでCに入れたプレイヤーは一億円を獲得できる」


 整理する、あたしたち5人と大人5人、大人にもAからEがいるということか。


「万が一、Cの未来に投票が入っていた場合、子供グループの負けで全員死刑、逆に入っていなかった場合一億円はなかった話になる」


 あたしたちも大人側も驚いた表情に、アリスは紙を見る。


「ではA、全滅に投票、B、Aの月山礼が一位に投票、C、Dの空光が一位に投票、D、同じくDの空光に投票、E、Eの僕に投票、結果的にB、C以外には投票済み、今回の一位はC横口未来、よって全員死刑はなし、一億円もなかったことになる」


 あたしたちは金としてかけられていたのか、大人側だけ本性がわかるようになっているということか?


「最後に、僕は責任を取らないといけない、罪のない人間を死刑にしようとした罰は僕がすべて受けよう」


 アリスの父親らしき人物が声を上げる。


「待て、まさかお前、まだあきらめてなかったのか、それに当たれば一億円の話は聞いたが投票したところの結果に票が入っていたら全員死刑は聞いてないぞ」


「なら、それも含めて罪を償うとしよう」


 腕をつかむアリスの父親。


「離すんだ、僕は主催者だぞ、パパは副主催者のEに過ぎないんだよ」


 どうするこの展開。とりあえず声をかけて呼び止めるか。


「おいアリス、お前がしようとすることは理解した、だがとりあえず飛行機には乗ろうぜ」


「今回は光も察しが悪いね、僕はあの環境に戻りたくないんだ」


 あの環境、あたしは隠し通して普通に生きることができた、だがアリスにはそれができなかった。おそらく相当辛い目にあっているのだろう。


「とりあえず僕は行方不明になったことにしておいてくれ、頼んだよ」



 私は黙ってこの光景を見ることしかできないの?せっかく敵同士だったけど分かり合えたと思った仲なのに、私を友達としてほしかったと言ってくれたアリスさんをこのまま行かせることなんてできなかった。気づけば体が動いていた。私はアリスさんを抱き寄せた。


「な…に、未来?」


「アリスさんがこのまま行ってしまうなら私もついていきますよ、どこまでも」


「何を言っているんだ、君は」


 アリスさんは一連の流れを見る限り、権力や財力があり、頭の回転率も速く、この罪を利用して自殺をする原動力は跳ね上がっているのだろう。でも、あくまで年齢的には3歳年上の私、力では私のほうが勝っていた。


「くっ、何をする、離せ」


「仕方ないわねぇ」


 礼さんも加勢してくれた。


「なぜ君まで、僕を助ける義理などないだろう」


「わたしが貴方を見下していた人間と同じ扱いにされるのが嫌だからに決まってるじゃない、同じ扱いにされてる以上離す気はないわ」


 海利さんも手を貸してくれた。


「全く、勝手に捨てて勝手に死なれるとこっちが困るのよ」


「さんざん持て余されてまだ忠誠を誓うというのか」


「未来は見つけたわよ、これで戻ってこれるのよね?」


「全く…こんな人間たちに囲まれたかったよ」


 アリスさんは泣きそうになりながらも飛行機の中に入る。


「また死ねなかったか」


 そんなこと言って私は最初に乗ってきたであろう飛行機の座席とはまた別の席に座り、隣に優しそうなさっきの5人のうちの一人の女性が座ってきた。


「あ、えっと、初めまして、横口未来です」


「はい、知っていますよ、都合上私は名乗れないのですがCとでも呼んでください。未来さん、一位おめでとうございます」


「ありがとうございます」


「学校には私が長い間緊急でお休みしますとお伝えしておりますのでご安心ください」


「あ、そうだったんですか、私戻れるんですよね?」


「はい、戻れますよ、一位になったことですし、いい情報を教えて差し上げますね」


「え、なんですか?」


「(???)」


「えぇっ!?」


 耳を傾け聞いた話は想像以上の話だった。また一つ楽しい学園生活になりそうです♪



 なんだこいつ、あたしの隣に座ってきたのは男の人物、学校でこのレベルの顔してたら惚れるやつはすぐ惚れるんだろうなぁ。


「よう、俺は名前は名乗れねぇがなかなか面白いもの見せてもらったぜ、案外気が合うかもな」


「あ、そっすか、え、あたしに用っすか?」


「すまねぇ、俺のことはDって呼んでくれ、まずは学校のこととか心配してるかもだけど大丈夫だぜ、俺が緊急でしばらく休むって伝えといたからな、他のメンバーも担当がいてな、同じような話してるところだ、で、俺の担当がお前、光ってことだ」


「戻れるんすね、色々聞きたいんですけどいいっすか?」


「まあそうだろうな、おう、いいぜ」


「なんであたしが選ばれたんすか?」


「お前施設で育ってるだろ?あの時から頭脳からなにからなにまで調べてるからな」


「あー、脳波取ったりいろいろしてましたねぇ、つーことは、じゃねぇわ、ということは他のメンバーも施設育ちなんすか?」


「そういうわけでもねぇんだよ」


「いろんな事情があるんっすね、でもこれ誰かが情報ばらまいたらどうするんすか?」


「問題ねぇよ、試しにばらまいてみな?」


「口封じに死刑なんてしないですよね?というか本当に死刑って起きてたんすかね」


「ここだけの話な、死刑なんて脅しだ、もし未来に票が入ってても全員死刑はなかったしお前が勝っててもお前が言い当てた人間が死刑されることはなかったな、ただそうだな、お前が言い当てたのはアリスと海利か、お前が一位ならアリスと海利はお前と未来、礼がいないところで違う飛行機に乗って回収して戻されてるだけだな」


「契約書にしてもルールにしても手が込んだことしましたねぇ、目的はなんっすか?」


「一からの人間関係、過酷な状況、まったく違った性質を持つ人間たち、この状況下に置かれたとき人間はどうするのか、もちろん殺人的な行為をする人間がいるとも限らないからそういう人間は選ばなかったけどな」


「いわゆる実験っすね」


「そうなるな、俺たち大人の誰までがわかってるか知らないが俺たちは俺たちでその状況を見せられても金に目が行く貪欲な人間って結果になっちまったけどな、俺たちのお前らで言う未来、つまりCは善人ではないってことだ。未来もいつか善人から堕ちるのかもな、大人は闇が深いぜ?」


「でも主催者はアリスなんすよね?」


「肩書じゃそういうことだな、企画を考えたのも彼女だしな、でも実質主催者はEの苗字はさすがにバレてるよな、花野ってことだ」


「子供ですもんねアリス」


「そうだな、つっても年齢、氏名とかは伏せるがこの5人、お前なら男喋りで鋭い天才的か、他の優しいとか独裁的とかだな、そんな奴らが急に一緒になって暮らしたら誰が生き残るかってテレビでやるかもな、その時の票が楽しみだぜ」


「答えは優しいってことですね?」


「そうだな、その答えを公表するか偽の公表をするかはその時の状況次第だ」


「未来のあとの二つって何なんですか?」


「これはアリス含め参加者には教えられねぇ、ただ一つ言えることはどっちも暴力とかそういう悪い方じゃなくて気が強いとかどっちもいいほうだってことだな」


 それを聞いてほっとする。


「ちなみに俺たちが投票した時はAの威圧的、Bの忠誠心が高い、Cの優しい、Dの天才的、Eの独裁的、全滅、脱落後にポイント追加ルール、パス後に残り日数がわかる、あとは生徒証の年齢や顔だな、偽性格の欄は分からなかった状態からの投票だ」


「全部本性分かってからの投票じゃないんすね」


「そうだぜ、つってもお題なしでしかも本性を全く隠すことなく二枠も残して一位になるとはなぁ、人間ってのは可能性の塊かもな」


「言われてみれば不利っすもんね」


「そういうお前は偽性格すら使わずさらに別の性格使ってたけどな」


「保険っすね」


「確かに働いたな、おっと、まだまだ時間はあるな、6時間くらいか、別に立っても声出しても未来たちとの席に行って戯れても好きにしていいからな、俺たちは大人の事情だ」


「忙しいんっすね、了解です」


 学校にいたらイケメン扱いされるんだろうなぁと思える顔立ちのDの人は飛行機の奥へと行ってしまった。



「また死ねなかったか、くっ」


「諦めろ、どれだけ企画を開こうと無意味だぞ、今回で懲りたか?」


 アリスは死んだ魚のような目をしている。


「また地獄に戻されるのか…でも、今回の企画はそれなりに楽しめた、希望も少しはあるのかもしれないね」


「その気になっても止めるだけだしな」


「パパはいつも僕より仕事を優先するよね?」


「い、忙しくてな」


「毎日忙しいんだね、土曜日も日曜日も」


「……」


「いいよ、誰にも必要とされてないのは分かってるから」


「そういうつもりじゃないんだ」


「次こそ、パパの立場を利用して弱者に救済を与えて死んでやる…」


 アリスに諦める日が来るのだろうか。



「おう、アリス、あと少しでお別れだな」


「そうだね、僕は永遠にここにいたいくらいだ」


「なんかあったら連絡先、あ、携帯ねぇわ」


「気を失っている間に持っていかれたのだろうね、僕は携帯すら持たされてないよ」


「そうなのか?じゃあ電話番号にしとくか?」


「どうせもう会えないんだ、話すたびに思い出して僕が泣くだけさ」


「それ言われちまったらあたしにはなんもできねぇな」


「ありがとう、楽しかったよ」


 その作り笑いの裏には多くの悲しみが見え隠れしていた。



「僕たち障害者が生き延びるためには競い、そして示さなければならない…見下されるだけ見下され、馬鹿にされ、時には弱みに付け込まれ、だからこそそんな人間にわからせる、僕たちでもできることを、そしてわからせた後に死という名の有終の美を飾る、そして気づくのだ、自らの愚かさを、失ってようやく気付くのだ…」


 アリスさんに近づこうとしたらよからぬことを企んでるアリスさんが一人で座っていた。


「あぁ…未来じゃないか、どうしたんだい」


 まるで顔が死んでいる。


「まだ死ぬことを諦めていないの?」


「僕は自分で死ぬ勇気はない、だが罪を犯した代償なら変わってくる、死刑なら逃れようがない死を味わえていたのに、君のせいでまた地獄に戻される、君と光のせいで変な期待も持ってしまったけどね」


「その変な期待に賭けてみるのは?」


「無駄だよ、期待すれば期待するほど外れた時の代償は大きい」


「それはそうですけど…」


「君のような存在が僕の環境にいるのなら別だけどね」


「仲良くなった証です、耳を貸してください」


「…?何のつもりだい?」


「(???)」


「ふふっ」


 その笑顔は純粋に笑っていた。まるで光を取り戻したかのように。




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悟りゲーム(無印、パート1) @sorano_alice

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