14th Chart:甲鉄会

 

「以上が本計画案の概要となります」


 最後にそう締めくくり、料亭の奥まった部屋に陣取った、出席者たちの顔をぐるりと見渡した。配置や任務の関係で入れ替わりの激しい佐官級の懇親会と異なり、上層部の魔窟の面子はある程度固定されている。ある一点を除き、代わり映えのしない面子だ。

 一応会食と言う体なので、座敷に集った人々の前には酒肴も酒も用意されているが、最初の乾杯以来手を付ける様子はあまりない。料亭側もこの会合の特殊性は知っているようで、冷めても問題の無い料理が並べられているのが救いと言えば救いだろうか

 さて、出席者の反応は困惑8割、期待1割、懐疑1割と言ったところ。前回の設計から幾らかいじくった後の初めてのお披露目ではあるが、彼らの顔を伺う限り感触は悪くない方だ。他人の心の機微などに、あまり敏感な方ではない――というよりも煩わしい――が、当初の予想よりは否定的な顔は少ない。

 正直言ってしまえば、ここに集った将官連中がどれほどこの艦の事を理解できているのか甚だ疑問ではあるが、自分は教師ではない。とにかくコイツ――A-801K6が有用な案だと理解させればそれで十分だ。

 無駄なことを考えている間に、質疑応答が始まった。


「何か、ご質問は有りますか?」

「では」


 司会進行を務める海上護衛総隊作戦参謀の神大佐が引き継いで直ぐ、壮年の海軍中将――海上護衛総隊司令長官、古賀コガ峰一ミネイチ中将が軽く手を上げる。


「今回より新たに搭載されることとなった、多銃身ガトリング式対空機銃についてだが、説明を聞く限り非常に有用性が高いものと考える。本設計では四○ミリ機関砲との混載となっているが、全てを置き換えた方が投射重量的にも有利なのではないかね?また、弾薬の共通化で補給の面も楽になると思うのだが」


 甲鉄会が牛耳っている組織とも表現できる、海上護衛総隊のトップからの問いかけは、ほぼ予想通り。返すべき答えを探す時間は必要なく、つらつらと返答が飛び出ていく。


「お言葉通り、四○ミリ機関砲は射程や砲弾重量等を除く、多くの点において新式対空機銃よりも性能面で劣ります。しかし、多種類の対空火器の搭載は、生存性を高めるうえで特に重要となります」


 永雫は移動式の黒板に貼り付けられた、A-801K6と名付けられた戦艦の概略図の内、対空火器が集中的に配置されている中央部を指し棒でぐるりと囲んだ。


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「本計画案における新式対空機銃の役割は、単装二五ミリ機関銃の代替、つまり敵攻撃機に対する最終段階においての迎撃です」


 続いて橙色の指し棒の先端が、搭載された三種類の対空火器を連続して叩く。


「電探連動の長十センチ砲による長距離防空、四○ミリ対空機関砲による中距離防空、そして新式機銃による近距離防空。三段構えの内、最も内側における近接防御を担当する火器です。いわば、航空攻撃に対する最後の砦となります。仮に全てを新式機銃に置き換えた場合、四○ミリが担う予定であった空域の弾幕の密度が低下し、隙を晒すこととなるでしょう」


 九八式十糎高角砲の最大射程は約18000m、去年に一応正式採用された零式四○粍機関砲は約7000m、そして今回追加されたガトリング式三○ミリ機銃は約4000m。

 実際に運用するとなれば、有効射程は更に短くなるが、敵機が攻撃するために掻い潜らねばならない槍衾の数は変わらない。古賀長官も「なるほど」と軽く頷いた。


「確かに、馬防柵は多い方が安全ではあるな。しかしそうなると、ガトリング機銃の更に内側に単装二十五ミリ機銃の防御線を設けないのは、また別の理由と言う事かね?」

「端的に言ってしまえば、二十五ミリ機銃の堅持は金と時間と命の無駄です」


 ピクリ、と海上護衛総隊を預かる面々の眉が上がる。

 皇紀2596年に採用された九六式ニ十五粍機銃は、現在最も多くの艦艇に装備されている対空火器と言って良い。

 フラグレスは未だに航空兵器を持っていないものの、航空主兵主義者が実権を握った段階から各艦の対空火器は増備される傾向にあった。

 しかし、現状は質より数という段階であり、去年採用された零式四○粍機関砲――Bofors 40mm/L60を永雫が改設計した物――は、高性能ではあるが零戦等の航空関係に予算を取られた結果、工廠以外の軍需工場の生産ラインの変更はなされず、既存艦や新造艦への搭載は遅々として進んでいない。

 海上護衛総隊もその例に漏れない。

 黒瀬型護衛巡洋艦の主砲は対空射撃が可能な高角砲と銘打たれているが、その実状は紆余曲折有って金剛型戦艦などに搭載されていた三年式十四センチ砲の仰角を、75度程度まで上げられるようにしただけの改造砲だった。当然、再装填は水平近くにまで砲身を倒す必要があり、対空火器としての性能は首を傾げざるを得ない。

 よって、二十五ミリ機銃が海上護衛総隊が保有する唯一の――真面な――対空火器と言えた。その火器が言外に「役立たず」と言われてしまえば、関係者に緊張が走るのも無理はない。


「ニ十五ミリ機銃は確かに零戦の九九式二十ミリ機関銃よりも大口径ですが、航空機の様に自由に射点を選択し相対速度を殺して攻撃できません。必然的に、遥かに遠い距離からの射撃となるため、威力、命中率は極端に下がります。弾頭重量の単純な換算ですが、四〇ミリ砲弾1発分の打撃を与えるにはニ十五ミリ弾4発の命中が必要でしょう」


 ぬぅ、と出席者の内数人が呻き声を上げる。

 航空機の目覚ましい発展に煮え湯を飲まされた結果が、今の航空主導の海軍組織だ。それを再び引っ繰り返す為に蠢動する彼らが、対空防御の研究を怠る道理はなかった。

 結果的に、隔絶しつつある航空機と艦艇の戦力差を突きつけられ、焦燥を募らせることとなっているが。


「さらに言えば、残ったスペースにニ十五ミリ単装機銃を収める場合、防盾シールド無しの銃架と手動照準という簡易的な物にせざるを得ません。――――米海軍のダグラスTBDデヴァステイターは、十二.七ミリクラスの前方機銃を備えており、各国の後継機もそれに習うでしょう。場合によっては、戦闘機が先導して機銃掃射を仕掛け、対空火力の漸減を図る事も考えられます。その際に、碌な防盾を持たない対空火器がどれほどの効果を発揮するのか。個人的な考えですが、威嚇以上のモノには成りえません」


 十二.七ミリ弾の直撃は、生半可な構造物であれば容易く破砕する威力を秘めている。鉄の塊である対空機銃もその例に漏れず、照準器や俯仰ハンドル、当たり所によっては、強固であるはずの銃身すら破壊されるだろう。人体であれば掠っただけで致命傷を負うに違いない。装甲板に覆われていない対空火器は、掃射を受ければ容易く沈黙する脆さを孕んでいた。


「相手がフラグレスならばともかく、人相手であれば威嚇の意味は十分あると考えるが、どうだろう。それに、撃墜には至らずとも射点につくのを阻止し、撃退できれば対空防御は果たされるのではないか?」


「横から失礼」と前置きした近藤中将が口を挟んだ。

 恰幅が良く穏やかな話し方から、何処か七福神の布袋様を思わせる。一瞬、温厚さによる消極的な意見かとも思ったが、彼の言葉に賛同する数人の出席者が、自分の返答を伺うように目を細めたのが見えた。どうやらこの認識は、彼らにとってそこまで的外れでもないようだ。


「手緩いですね」


 その質問をあえてバッサリと切り捨ててみるが、近藤中将は不快感をあらわにすることもなく、むしろ興味深げに片方の眉を上げてきた。

 ひょっとすると、これから自分が話そうとする結論に既に至っており、それを再周知させるために道化を演じて見せたのかもしれない。他人に操られるようで癪だが、コチラの見解を明らかにしておくのは悪い話ではない、考えすぎと言う事にしておくのが適当だろう。


「航空機は優秀な搭乗員を集めて初めて有効打たりえます。どれほど機体を傷めつけたとしても、搭乗員が生還すれば敵の本質的な戦力が減ることはありません」


 雲霞の如く迫る敵の航空機を叩き落とし、百発百中の雷爆撃を敢行できる優秀な搭乗員あってこそ、航空機は絶大な戦力を戦艦には不可能な遠方に正確に投射できる。だからこそ、搭乗員は日夜危険極まりない訓練を実施して研鑽を積み、一騎当千の海鷲への階段を着実に登ろうとしているが、それはそのまま急所となりえた。


「逆に言えば、向かってくる航空機を皆殺しにしてしまえば、敵の航空戦力の根本を削ることができます」


 そこそこ物騒な物言いをしている自覚はあるが、真実なのだから仕方がない。

 相手がフラグレスであれ人であれ、消耗戦とはそう言うモノだ。如何にこちらの犠牲を抑え効率よく敵を駆除し、基盤となる経戦能力を削ぐか。如何に多くの血を相手に流させるかの戦いだ。


「新品の機体を作る労力と、真面に使える搭乗員を揃える労力。どちらが敵にとってより負担となるかは考えるまでもありません。――攻撃は最大の防御、とは連合艦隊が好む言い回しですが、防御をもって最良の攻撃とすることも可能なのです」


 【連合艦隊】というセリフを口にする瞬間、海上の一角に陣取る二人の将官へと一瞬視線を向けた。

 片方は自分の養父である連合艦隊参謀長。何時もの様に仏頂面のまま耳を傾けている。もう片方は養父の口利きもあって、今回の会合に初めて乗りこんで来た人物。

 人殺しと畏怖されるほど苛烈な訓練を課しているようには到底思えない、穏やかな顔付の男――第二航空戦隊司令官、山口正成少将。

 優秀な機動部隊指揮官として評される彼が、何故大艦巨砲主義者の魔窟とも陰口を叩かれるこの場に居るのか。  

 連れてくる養父も養父だが、彼の傘下を受け入れる宮様の考えは、未だによくわからない。





 一通りの質疑応答を終え、重い足取りで自分に割り当てられた席に歩みを進める。自分と入れ替わりに前に立ったのは矢木教授だ。彼の御仁とはA-801に搭載する射撃管制電探の件で密接に連絡を取り合っており、この計画に無くてはならない人物でもある。

 現在では大阪帝国大学の一角に西日本電子技術研究室を構え、宇田川博士や多くの優秀な研究員と共に電探の高性能化を図っており、限られた予算の中で歩みを進めている。予算の関係上、未だに現物の製造には至っていないが、展望は悪くない。

 呉工廠から貸与された遺産工廠の電子製図板の助けもあり、自分が見る限り実戦に耐えうるものが出来つつあると確信している。

 上等な座布団に腰を下ろすと、喉の渇きを思い出したこともあって、思わずグラスに注がれっぱなしになっていたビールを一息にあおった。気の抜けた液体ではあるが、とりあえず人心地つくには十分だ。

 ほぅ、と小さく息を吐いた時、空になったグラスに向けて茶色い瓶が横から突き出されていることに気が付く。あまり直視したくない現実に溜息を吐き出しそうになりながら、仕方なく隣を振り返った。

 途端に視界に移りこんだ人好きのする笑みに、喉の奥で止めたはずのため息が溢れそうになった。


「お疲れさまでした、永倉さん。見るたびに素晴らしい艦になっていきますね」

「フン、見え透いた世辞はよせ。虫唾が走る」


「つれないですね」と苦笑しつつ、空になった自分のグラスにビールを注ぐ青年――中島飛行機特殊航空機研究班、奥井当間。

 年の頃は20代前半と言ったところで、歌舞伎の女形を連想させる中性的な美男子と評せる。何時からか甲鉄会の上層部の会合に顔を見せる様になった人物だ。

 軽率にも回転翼機に対する幾らかの助言をしてしまったことが切っ掛けで、懐かれたのか、気に入られたのか、妙に絡まれるようになってしまった。


「世辞ではありませんよ。理に適った強力な兵器と言うのは、美しい姿をしていますが、貴女の艦は、日本刀の様な気品と畏怖を内包している。ただの概略図でこれほどなのですから、実現すればどれ程のモノになるのか、想像すらできません」

「まだ幾つも改良点が有る。あくまでも、まだ試案だ。そんなことより、貴様の方はどうなんだ?」


「順調ですよ」と人好きのする笑みを浮かべる奥井の顔を見て、「まずったな」と押し留めていた溜息を内心で吐き出した。

 背中がむずがゆくなる話題を逸らすために、更に話題を振ってどうするのか。自分の対人能力に呆れすら浮かんでくる。


「貴女のお陰で、プロペラ同調装置も何とかなりそうです。チタンを余計に使うことになりますが、遺産工廠さえあれば、最悪砂鉄から分離できますから問題は有りません。これで、また一歩目標に近づけます」

「完全なティルトローター機か。モノになれば使いでが在りそうだが、その前にまずは真面な機体で正式採用を取ったらどうだ?」

「KA-5の改良型の試作機は既に製造中です。乗員2名に兵員10名の本格的な汎用回転翼機がね。直に、トンボ釣りも潜水艦狩りも駆逐艦の仕事では無くなりますよ。――それとKA-5をサイド・バイ・サイド・ローター化して、重武装を施す計画もあります」

「サイド・バイ・サイド、となると並列か。武装を吊り下げるには、そちらの方が良い……のか?」

「両翼の先端にメインローターを備えるので、どのみち腕は強固に作りますからね。武装を使って軽くなっても、推力軸から近ければ重心バランスへの悪影響は減らせます。ドイツの後追いかもしれませんが、性能は間違いなく上ですよ」


 頭の中でKA-5の両側にメインローターを付け足してみる。

 武装を吊り下げるとなれば、昨年飛行したドイツ帝国のFa223ドラッヘよりも、幾分がっしりした機体になるはずだ。

 対地支援と考えれば多連装噴進砲が適当か……何というか、怪獣映画のやられメカ臭がしてくるのは何故だろう。景気よく砲弾をバラまいた後、派手に撃墜されて不時着したところを踏みつぶされるとか似合いそうだ。


「電探と回転翼機が発達すれば、水偵の役割は恐らく御終いでしょう。後部甲板の再設計をお勧めいたします」

「考慮しよう。だが、発艦はともかく着艦は如何する?」

「それもご心配なく。釣りをしていた時に、一つ思いつきましてね」

「釣り?――――ああ、なるほど。機体を吊り上げる、いや、気か」


 永雫の言葉に、奥井が目を見開き、息を飲んだ。もっとも、彼の変化にさしたる興味を見せることなく、当人は酒肴に箸を伸ばしていたが。


 悪戯を思いついた悪童の様な台詞から、即座に類推して見せた才媛に奥井の口から思わず感嘆の息が漏れた。

 本当に、一体この人の目にはどんな世界が広がっているのだろう。

 技術者としての畏敬と、一撮みの嫉妬。自分のようなモノには到底及びもつかない高みに、この女性は既にいる。彼女が気まぐれに垂らした蜘蛛の糸に気づいた技術者は、それを手繰り寄せずにはいられない。

 より高く、より精緻に、彼女が持つ視座に立ちたいと、這い上がろうと藻掻く。夜空の星に手を伸ばすような無謀な挑戦、それでも自分は、一人の技術屋としてその輝きを求めずにはいられなかった。

 自分の感動など興味も無いとばかりに、ビールを傾ける永倉永雫という女性。

 彼女の傍に立てる日が来るのは、何時になるのだろうか。何処か危うさと影を感じさせる彼女と同じ世界を見てみたいという想いは、簡単に諦めきれそうもない。


「時に、奥井技師。――――『扶桑』が出撃するなどと言う与太話を耳に挟んだが、聞いたことはあるか?」


 半分ほど残ったグラスに視線を落としながら紡がれた言葉に、一瞬言葉に詰まった。

 その内容が軍機に関わるからというわけでは無く――それこそ、連合艦隊出撃の噂は市井に溢れかえっている――零された言葉が、これまでに聞いたこともないほど弱弱しい声色だったからだ。

 世間一般に言えば天才の括りに分類され、軍部とまではいかないが様々な軋轢が犇く中島飛行機内部の小規模な派閥闘争を生き延びてきた奥井は、永雫が『扶桑』の出撃を極度に恐れていることを敏感に悟る。無論、『扶桑』其の物を案じているのではなく、正確には其処に乗務するある男の事であろうことは、容易に想像がついた。

 二月ほども前、夏も終わりに近づいた頃の甲鉄会の会合の後で話かけられた、ある海軍中佐の言葉を思い出す。

 彼の中佐が彼女の兄貴分と言う事は事前に知っていたので、最初は想いを寄せているのを見抜かれ、釘を刺されるのかと冷や汗が出たものだが、それは杞憂に終わった。


 ――万一、僕にもしもの事があった時は、永倉の事をよろしく頼む。それなりに塞込ふさぎこむだろうが、馬鹿では無いからな。君に力になってもらえるのなら、安心だ。


 警戒していた時に、そんな言葉が飛び出してきたのだから、内心酷く驚いてしまった。しかし、言葉自体は柔らかな微笑と共に紡がれたものだったが、赤黒く見えた瞳の中には、微かな寂しさと自嘲のようなモノが確かに滲んでいたことを覚えている。

 彼女の同居人であり、兄貴分。――戦艦『扶桑』砲術長、有瀬一春中佐。

 実際の所、自分は彼を良く知っているというわけではない。

 若くして『扶桑』の砲術長に任ぜられた軍人にしては、偉ぶらず接しやすい人物という印象だったと表現できる程度だ。永倉技師が楽しげに話す話題の中に、彼の事も散見されるのも頷ける。信頼のおけそうな青年将校。

 だが、ここでの彼女の様子を見る限り、どうにもそれだけでは無い様な気もしてくる。【負け戦】と言う不吉な単語が脳裏を過り、内心で「そう決まったわけでは無い」と自己暗示して掻き消した。


「どうなんだ?奥井」

「え、えぇと。そうですね、まあ、最近になって良く聞く話です。他にも、連合艦隊総出でトラックを叩くとか、南への足掛かりに台湾を奪還するとか、何とも豪快な話です」


 縋りつくような声にせっつかれ、言うべきかどうか迷っていた言葉を思わず零してしまった。

 その直後に、彼女が有瀬中佐の事を心配しているのであれば、悪戯にその感情を煽り立てるべきでは無かったかもしれないと直観するが、もはや何もかも遅い。


「そう……か。解った」


 自分の返答に一瞬顔を歪めて頷いた彼女が、逃げるように顔を背けた。何かを洗い流そうとするかのように、残ったビールを一息に飲み切る想い人を見て、後悔と諦観が綯交ぜになった名状し難い感情が浮上する。

 戦う前に負けを認めてどうするのだと内心で叱咤しつつ、胸中に溜まった不吉なモノを流しこもうと、自分もグラスを傾けるのだった。

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