終編:ごめんなさいを言うために
「もしもし」
『夜分遅くにすいません、プロデューサー』
「なんだ、彩羽か。こんな時間にどうした?」
『その……明日のダンスレッスンを、週末に振り替えてもらってもいいでしょうか』
「ああ、別に構わないぞ」
『ありがとうございます』
「えっと、一応理由を聞いてもいいか?」
『や、やっぱり、そうなりますよね……』
「まあな、理由もなしにポンポン休まれたらこっちも困るし」
『えっと……プロデューサーには以前お話したかもしれませんが……“彼”のもとを訪ねてみようと思ってるんです』
「……え、それってつまり」
『今度こそ、「ごめんなさい」って心の底から謝るために……過去のなにもできなかった自分を、知ってもらうために』
「…………」
『だから明日、レッスンをお休みします』
「……了解した。でも、なんで急にそんなことを思い立ったんだ?」
『それは……一人の呑気な女の子のおかげ、ですね』
ぷろ……でゅーさーさん……誰とおはなししてるの……?
「えっ、ちょ、真由里!? なんで急に起きて……!?」
『えっ? どうして真由里がそこにいるんですか?』
「ああいや、これにはマリアナ海溝より深い深いわけがあってだな」
『まさかプロデューサー、さっきの打ち上げでこっそり真由里の飲み物に変な薬でも入れてお持ち帰りしたんですか……!?』
「違うから! 断じてそういう犯罪は犯してないから!」
『え、じゃあ……』
「いやだから、誰も……じゃなくてナニも犯してないから!」
『――ふふっ』
「……え?」
『冗談ですよ、プロデューサー』
「え? 冗談って……え?」
『どうして真由里がプロデューサーと一緒の事務所にいるのか……理由はだいたい把握しているので』
「え? なんで?」
『アイドルの秘密です』
いっしょに……寝よぉ~?
「うわっ!? お前まだ寝ぼけてるだろ!」
『ふふっ、じゃあ真由里のこと頼みますね』
「えっ、待ってこれだと変な誤解を生じさせている気が――」
『これからも、“プロデューサーとして”真由里の面倒を見てあげてください』
「い、彩羽……お前どこまで知って――」
よいしょっ……えへへ、捕まえた~
「むごっ!? 待って同衾は勘弁して!」
『それじゃあお休みなさい、プロデューサー』
「待って! それは倫理的にアウトだからやめて――――—ッ!!」
(了)
イミテーション・メモリーズ こんかぜ @knkz3315_west
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