4話 どうしてこうなった?
キーンコーンカーンコーン
授業もおわり、放課後になった。
今日は朝から色々あったが、それ以降は落ち着いて、穏やかに過ごせた。
おかげで、気になっていた小説もかなり進めたし、内容も当たりだったので、結果悪くない1日だったといえる。
ホームルームが終わると、すぐに帰宅の準備を始めた。
いつもなら部活に行くところだが、今日は職員会議があるらしく、ほとんどの部活が休みになった。
僕の所属している部も、今日は例に漏れず休みになった。
僕は荷物をまとめ終えると、早崎の方へ向かう。
「早崎も今日は休みか?」
「うん、じゃあ帰ろうか」
僕は演劇部、早崎は漫画研究部で、お互い文化部に所属しているため、こういった休みの日は同じだったりするので、その時は一緒に帰ることが多い。
早崎も荷物をまとめ終えると、2人で帰路にむかった。
そこそこの距離を歩いて、周りに同じ制服の人がいなくなったタイミングで早崎に聞いてみた。
「なあ、なんでみんな僕を頼るんだ?」
そう聞くと、早崎はいつも通りの何食わぬ顔で答える。
「今更だね」
「いや、そうだけどさ、どう考えもこうなった原因が思いつかなくってさ」
前にも言ったが、別に僕は最初からこんな役目を担いたかった訳では無い。本当はもっと穏やかな学校生活を目指していたわけで、こうなることは想定外の出来事だった。
その上、僕にはなにか秀でた特徴がある訳でもない。
成績は普通だし、制服もきっちりとしてるし、特別イケメンでもなく、身長はむしろ低い。
そんな、なんの特徴もなく、静かに過ごしてた人に色んな人が関わってくる理由が僕には分からなかった。
「だからさ、何かないか?僕を頼りたくなる何かが」
「うーん」
早崎は首を傾げながらこっちをジッと見ている。
なんだかむず痒い感じがしたが、これも解決するためだと我慢した。
少しすると、早崎が口を開いた。
「なんというか、話しかけやすい雰囲気はあるかもね。あんまり怒らなそうだし」
「なんだそれ」
思いもよらない答えだったからそう言ったものの、間違っているとは断言できなかった。
確かに今まで色々頼まれてきたが、そのことで怒ったことはないし、少し文句は言いながらも、ほぼほぼ受け入れていた。
まあ、ただ自分が頼みを断れない性格なだけでもあるのだが……
話しかけやすい雰囲気というのに関してはあんまり理解できないが、でも僕の男としては低い身長だったり、きちっとした制服の着こなしだったりは、女子からも高圧的には感じず、話しかけやすく見えるのかもしれない。
そう思うと、早崎の言うことがなんとなく納得できた。しかし……
「それをいうなら、他にも似たようなやつはいると思うけどな」
そうだ、僕は身長が低いといっても、他にも同じくらいの身長の人もいるし、それに派手な奴もいるが、うちのクラスには特に不良のようなやつもいないし、全体的に雰囲気はいいはずだ。
実際に、一応クラスメイトとは全員と話してるが、威圧感がある人なんて1人もいなかった。
そう考えると、早崎の言ってることは、あまり納得のいく答えとはならなかった。
じゃあ一体どうしてこうなったのだろうか?
ぶつぶつと考えていると、早崎が僕の頭をチョップしてきた。
「考えすぎ、みんなそんなに深い意味は無いと思うよ」
「そんなもんか?」
「そんなもんだよ。たまたま幸人に頼んだらたまたま幸人が受け入れてくれる人で、みんなそれにのっかっていっただけ。つまり全部幸人のせい」
「え、理不尽すぎない?」
なんだかんだしているうちに、最寄りの駅に到着していた。
「じゃあ、俺は帰るよ。幸人は深く感考えるより、なんでも引き受けてしまった自分の過去を恨むべきだよ」
最後にそう言い残して、早崎は駅内に消えていった。
いや、確かにそうなんだけれども。
……なんだか急にへこんできた。
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