第132話 かつての仲間
※ルーミアを追放したパーティリーダーのアンジェロという男性キャラですが、アンジェリカと名前が酷似しており、姉弟関係などを匂わせたいなどの意図もなくそのようになっていたので『アレン』に変更させていただきます
しばらくぶりの登場で覚えていない方もいるかもしれませんが、どうぞご了承ください
あらすじや現在掲載されているエピソードの方も追って修正を入れていきます
◇
「ルーミアさん、その方は知り合いですか?」
「何……? ルーミア、だと?」
男に対して背を向けたままのルーミアの反応を見て、リリスは怪訝そうに尋ねた。
そして、その言葉。正確にはリリスが呼んだ『ルーミア』という名前に反応した男は足を止めた。
振り返り、ルーミアの肩に手をかける。
相手が小柄な女性であることもお構いなしにグッと腕を引き、その白髪の向こう側にある顔を拝もうとしている。
ルーミアが見た目通りの少女ならばそれだけで振り向かせることができたのかもしれないが、常時強化状態のルーミアはびくともしない。
「久しぶりだというのに随分な挨拶ですね……アレンさん」
「……やっぱりお前なのか、ルーミア」
何の因果だろうか。
ルーミアがぶつかり、聞き覚えのある声だと思ったその男は――かつてルーミアの仲間で、パーティのリーダーをしていた。そして、欠陥白魔導師のルーミアに見切りをつけ、パーティを追放した張本人であるアレンだった。
いきなり肩を掴まれたルーミアは不機嫌そうに振り向いてかつてのリーダー、アレンと対面した。
とはいえ、先にぶつかったのはルーミアの方だ。そのことを棚に上げてまで小言を言うつもりはない。ルーミアは一睨みしてはぁとため息を吐いた。
「あれ以来姿を見ていなかったから冒険者などとっくにやめたと思っていたが……まだ続けていたのか」
「おかげさまで」
「だが……なぜお前のような奴がここにいる? ここは王都の冒険者ギルド本部だぞ?」
「私がどこで何をしていようとあなたには関係ないと思いますがねぇ……」
確かに王都の冒険者ギルドはギルド本部ということで、規模も大きく強い冒険者も多く拠点としている。だが、それは実力のないものが弾かれるという意味ではない。冒険者であればそこにいる事に大した理由は必要ない。王都の冒険者ギルドだからルーミアがいてはいけないという理由はどこにも存在しない。
それでも、アレンが噛み付いてくる理由は、パーティを追放されたルーミアが一番よく分かっている。結局のところ、ルーミアが『欠陥白魔導師』という点に帰結するのだ。
(何でしょう……この状況)
睨み合うアレンとルーミア。その様子を困惑しながら静かに見つめるリリス。
そこに二つの足音が加わった。
「アレン、ここにいたのか」
「あなたは……もしかしてルーミアさん?」
「……ザックさんとヒナさんですか。お久しぶりですね」
現れたのはザックとヒナ。
こうしてかつての仲間が勢ぞろいしてしまったことにルーミアは若干顔を顰めた。
だが、以前と違ってもう恐怖はない。あの頃のルーミアとは違い、彼女は自信に満ち溢れている。でなければアレンと対面した時点でリリスの背中に隠れてしまっていただろう。
そうならないのはひとえに彼らに対する恐怖がなく、さらには興味もなくなっているからだ。
ルーミアがもう彼らに対して怯えの感情を持つことはない。
こうして目の前にかつての仲間がいても、ルーミアは嫌そうな顔をして、リリスを守るように立っている。
「おや……そう言えば私が元々付けていた装備は後任の白魔導師に渡すとのことでしたが、その方はどちらに? よければ紹介してくれませんか?」
ルーミアにとってそれは単純な疑問だった。
自分を追い出して、新たな白魔導師を引き入れるというのだからさぞ優秀な仲間を迎えることができたのだろう。
そう考えたルーミアは彼らにとって痛いところを突いた。
ルーミアはパーティを追放されて彼らから逃げるようにユーティリスへとやってきた。そのため、アレン達のパーティ事情など知る由もない。
彼らの不評を知らないからこそ、無意識に突いた傷。意図して行われた攻撃ではないのだが、不満を募らせるには十分な問いにアレンはギリっと歯を食いしばる。
「アレンさん。ここは恥を忍んででも……」
「……ちっ、勝手にしろ」
ヒナはコソッとアレンに耳打ちをする。
それを聞いたアレンは嫌そうな顔で舌打ちをした。
仲間内で何を揉めているのだろうかと不思議に思うルーミアに、ヒナが真剣な眼差しを向け――意を決したように口を開いた。
「追い出しておいてこんな事……虫のいい話だと言うのは分かっています。なので、恥を忍んでお願いする事になるのですが……ルーミアさん、私達のパーティに戻ってきてくれませんか?」
「え…………?」
「へぇ……」
ヒナの口から告げられたのは、ルーミアに戻ってきてほしいという旨だった。
それを聞いたリリスは、かつてルーミアから聞いた過去の話を思い出し、彼らの関係性を正しく理解した。だからこそ驚きを禁じ得ない。
その一方でルーミアも思案する。
かつての仲間が零したその願いには一体どのような背景があり、どのような意味が込められているのか。
それらについて少しだけ興味が湧いたルーミアは、目を細めてかつての仲間達を見据えた。
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