怪人ニシキの共同調理 5

 飛び散るうろこもなんのその、スプーンでがりがりと削り取ったら次はエラと内臓を取り出すのだがこれがまた難関だった。

 動画を見てもいまいちどこを切るのかわからない。


「うーん、よくわからないんだが、なんか薄い皮というか膜でなにもかも繋がってるような」


「エラと繋がってる薄い膜は全部切り離してもいいんじゃね?」


「そうだね、切れないと外せないわけだし。ぐぬぬ、エラ先だっけ?あごの下の接続部分、全然切れないんだけど?」


「そこ動画ではスパッと切れてるんだよなあ、よくわからん」


「まあそれを言い出すと動画ではどこもかしこもスパスパ切れててなにもわからないとも言えるね」


「それもそうだなー」


「動画をあげているのはプロかそれに準ずる程度にはやり込んでるひとばかりだから、包丁の切れ味とかも違うのかもしれませんね」


「ふふ、自慢じゃないがうちの包丁はスーパーで買った安物なうえに十年選手だぞ」


「勝負にならねえ…そうだ、ハサミとかどーよ」


 ニシキの提案に首を傾げるニノマエとニカイドウ。


「キッチン用のやつ、ハサミならあるんじゃねーか?カニを切ったりするやつとかさあ」


「ああ、それはあるかもしれないね。ちょっと待ちたまえよ…っと、あったあった」


「俺らみたいな素人が細かいとこに包丁突っ込んで切るのは難しいってニカイドウを見ててよくわかった。だから俺たちは文明の利器に頼ろう!ハサミならエラも腹も切りやすいんじゃね?」


 言われるままにハサミの先端を差し込んで、エラ先を切断する。


「おお、これはらくちん。やるねニシキくん。頼りになるぅ!」


「そうだろうそうだろう。俺は頼りになる男さ」


 ニカイドウのあからさまなご機嫌取りに調子に乗っているニシキに構うことなくニノマエは動画を進めて次の工程を確認している。


「次はカマ下から包丁を入れてお尻まで切るらしいんですけど、これもハサミでやったほうがよさそうですね。初めてで包丁だと内臓を傷付けて大変なことになりそうです」


「カマ下ってどこさ」


「カマわかります?魚の下部の左右のカマの間がカマ下です」


「エラとカマの違いがわからないんだけどここかな」


「外がカマで中のグロいのがエラですねたぶん」


「なるほど理解した。…んんんこれ硬いんだけどっ、なっ、くっ、切れないっ!気合か、気合が足りないのか!」


「ハサミなら気合次第でイケると思います。会長頑張って下さい」


「女性諸君なんでも気合で切ろうとするの絶対間違いだからな!?」


「よし!今なにか想定外のものを切断した手応えがあったぞ」


「なんにもよくねえよおおおおおおっ!」


臓物ハラワタを!ブチ撒けろ!おっと千切れた」


「うぷ、すみませんちょっと…お手洗いに…グロ…」


「ニノマエちゃん俺たちだけにしないでくれええええええっ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る