怪人ニシキの共同調理 4
こうして30分ほど。残されたふたりは結局ネットで“魚の捌き方”と“アクアパッツァのレシピ”をそれぞれ探し出し、ニカイドウは母親から借りたノートパソコンをキッチンへ持ってきて改めてリモート会議へ参加。作業を実況しつつふたりが指示を出す体制が確立された。
「よーし、それでは改めて本日の作戦目標に挑んでいこうと思う!」
キッチンへ移動したニカイドウは汚れが気になると言って上着を脱ぎキャミソール一枚の姿になっていた。
立って作業をするニカイドウはパソコンの画面を覗くときには前屈みがちになるのだが、そうするとただでさえ無防備な胸元から下着とそれに包まれたふくらみがチラチラと覗く。
でれでれと鼻の下を伸ばしているニシキとなにも言わず冷めた目でパーカーのファスナーをしめるニノマエがあまりにも対照的で、ふたりを見たニカイドウは笑いを堪えきれない。
「なにか?」
「ははは、いや、なんでもないよ。それではええと、まずはぶつ切りにしたらいいのかな」
そういうと彼女はまな板のうえに真鯛を置くといきなり頭を落とそうと包丁を当てた。
「おや、あれ、意外と硬いな。魚ってこんな硬い生き物だっけ?」
「まてまてニカイドウ、もしかしてそれうろこが取ってないんじゃないのか」
「ほう、うろこ」
包丁の切っ先を垂直に当ててつつくが硬い甲羅のような手応えがありまったく刃が通る気配がない。
「そのようだね。これはどうしたらいいのかな。気合?」
「気合でうろこは取れねえだろ…バラ引きってうろこ取りの道具があるらしいけど家にあるか?なんか金属製のブラシみたいなやつ」
「ちょっと待ちたまえよ。…ママーうろこ取りってうちにあるのー?バラ引き?とかいうやつー。え?ない?あー、ないかー。…ないってさ、残念」
「百円ショップとかでも売ってるらしいけど」
「近所にはないなー」
これは早くも終了かなとニシキが溜息を吐いたところで、無言でキーボードを叩いていたニノマエが口を開いた。
「スプーンでも取れるらしいですよ」
「ほう、さすがにスプーンならあるね」
「使い方はうろこ取りを使ったときと同じ要領でいいみたいです。動画送りますね」
「さすがニノマエさん頼りになる」
そういいながらちらりとニシキへ視線を向けるニカイドウ。
「俺が頼りにならないみたいな視線の向け方やめてもらえません?」
「私はもちろんキミの今後の活躍に期待しているとも」
「ぴゃい」
ふたりのやり取りをみて『さっさと付き合えばいいのに』と思わずにはいられないニノマエだった。
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