怪人ニシキの共同調理 6
三者三様の決死の献身(献身度合いには個人差があります)により三十分後、どうにか魚の解体を完了したのだが、戦いは道半ばというかまだ食材の下拵えが終わっただけである。
そして今からがまさに本番なのだが、ここでまさかの助っ人が登場する。
「どうもみなさん、いつもマオちゃんがお世話になってます」
キッチンへにこやかに現れた淑女、そう、ニカイドウ母だった。
「おおおお義母さんはじめまして生徒会副会長のニシキと申しますどうもはじめましてぇっ」
「先輩はじめましてが被ってますしなんか呼び方が恣意的ですよ。はじめまして後輩のニノマエです」
「あらあら、ふたりともマオちゃんのお友達とは思えないほど礼儀正しいわね」
「ちょっとママ!私が礼儀正しくないみたいに言わないでくれない!?」
「会長ご家族と話すときは別人みたいですね」
「それなー」
「ああんもう!ママなんで出てきたのよ!」
「マオちゃんの作ってるそれが私とパパのお夕飯になるからじゃないかしらね」
「「「…はい」」」
期せずして三人がハモった。
「そもそも我が家のキッチンはママのお城なの。器具を乱暴に扱ったり無用に散らかしたりするのは許さないわ。しばらく様子を見てたけどマオちゃんあんまり要領よくないし、ここからは火も使うからママがきっちり監督します。いいわね?」
ぐうの音も出ない。
しかし結果としてこの参戦は正解だったと言わざるを得なかった。
そもそもニカイドウはアクアパッツァのレシピをまったく理解していないまま本日に臨んだので、材料が十分には揃っていなかったのである。
彼女は真鯛のほかにはアサリとブラックオリーブ、パセリしか買っておらず、アンチョビやケッパー、ドライトマトのような一般家庭にはあまり買い置きのない調味料について完全にノーマークだった。
ところがニカイドウ母、魚を購入した時点でアクアパッツァを作りたいという話を聞き出して敢えて本人にはなにも教えることなく、その上でこっそり不足の材料を買い足していたのだ。
まあぶっちゃけ完全に仕組まれた参戦だった。この娘にしてこの母ありである。
よって後半戦、調理パートについてはニカイドウ母によるレクチャーを聞きながらニカイドウ娘の調理を見学するという、生徒会活動としてはなんだかよくわからないリモート会議が続けられた。
「それにしてもマオちゃんてば男の子がいるのにそんな格好して。普段家の中でもそんなはだけた服着てないじゃない」
「え、そうなん?」
「ママああああああああああああっ!!!?!?」
のちにニノマエは自分の彼氏に「このときの会長の悲鳴が一番面白かった」と語る。
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