第4話
あれから一ヶ月後
「すげぇ、変わったよな。ここ」
一ヶ月たち、ようやく悪魔たちの進行を食い止めたらしい悠真は久しぶりに訪れた玲於宅を見て呆然と呟く。
必要最低限のものしかなくただただ広いだけの悲しい空間だったそこには、ソファーやテレビ、本がたくさん置かれた本棚や様々な小物なども増え、おしゃれな空間に早変わりしていた。
「流石に味気なかったし、何もないと私が暇だからね」
葉月は、もうすっかり玲於との共同生活も馴染み、普通にソファでだらけている。
これらの品々はすべて奈弓が玲於に頼んで買ってもらったものだった。
「お金は有り余ってるようだから。ちょっと図々しいかなと思ったけど」
「ははは!いいだろ!今まではあまりにも生活感がなかったからな。人間らしくなってよかったじゃねぇか!」
ストーブの前に置かれたソファに寝転び、ぐーたらしている玲於の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。
「あぁー、これは人を駄目にするよ。うん」
玲於は撫でられたまま気持ちよさそうに告げて、笑う。
「ッ。ははは、そうかそうか!ところでよ、ベッドここ一つしかなかったと思うんだが、どうしたんだ?」
玲於の笑顔を見た悠真が一瞬顔をこわばらせるも何もなかったかのように話し続ける。
「ん?一緒に寝た」
「一緒に寝た!?」
悠真はなんでもないかのように言った玲於の一言に驚愕する。
「嘘だろ!?」
「あ、いや!違うの!その、ベッドも広かったし、そ、添い寝しただけで。変なことはしてないの!」
「添い寝しただけ!?マジかよ。……最近の若者は進んでだな」
30後半の悠真は若者の貞操観念に驚愕する。
「あ、待って!違うの。私は貞操観念しっかりしてるわ!でも、玲於が……!」
「ん?一緒に寝ただけでなんでそんなに慌てているの?別に悠真とだって一緒に寝たことあったでしょ?確か」
「……いや、男女の差が、な。というか俺らのときは仕方なく……」
「男女の差?」
首をかしげる玲於にこりゃ駄目だと悠真はため息をつく。
「って、驚きで何のためにここに来たか忘れちまったぜ」
「ん?なんか用があったの?」
「あぁ、まだ悪魔どもの進行が続いている。今回はなにか違うと俺の感が言っているんだ。そこで玲於の力を借りたい」
「いいよ」
悠真の頼みをあっさりと玲於は承諾する。
「い、いいのか」
予想よりもあっさりとした了承した玲於に悠真はつい聞き返す。
「うん。『魔武術』使ってみたかったんだよね」
「そうか。どんな理由であれ、ありがたい」
悠真は玲於に頭を下げた。
「奈弓はどうする?僕についてくる?」
「そうだね。出来ればついていきたい」
未だわからない玲於の実力を見てみたい奈弓はついて行きたいところである。
「わかった。じゃあ、一緒に行こ」
「うん」
「おうさ!そうと決まれば大日本鉄血団の本部に行こうぜ。そこで荷物持って前線に行くぞ」
「うん」
三人は大日本鉄血団の本部に向かった。
大本鉄血団本部 倉庫
「よっこらせと」
悠真は倉庫に保管されていた巨大な樽を持ち上げる。
玲於はおいてあった樽を魔法で浮かせる。
「おし、じゃあ行くか」
「私も持ったほうがいい?」
「いや、嬢ちゃんはやめといたほうがいい。嬢ちゃんが持つもんじゃねぇさ」
「む。私だってこれくらい持てるよ?」
「いや、別に嬢ちゃんが弱いって思ってるわけじゃねぇんだ。ただ、こいつの中身に問題があるだけさ」
「中身?」
「おう。深くは言えねぇけどな」
「深くは、言えない。なら仕方ないか」
政府のものには聞かせるわけにはいかない大日本鉄血団の企業秘密なのだろうと納得する。
下手に首を突っ込んでまた睨まれたくない。
「あぁ、それでいい。じゃあ行くぞ」
悠真は倉庫の外に出て、倉庫の隣りにある本部とは逆方面に向かっていく。
「え?本部に行くのでは?」
「はぁ?なんで戦いに行くのに本部に行かなきゃいけねぇんだ?戦線はここじゃねぇぞ」
「……確かにそうだな」
大日本鉄血団の本部を見たかった奈弓だが我慢する。
下手に(略
「早く、行こ」
「お、そうだな」
樽を最大限自分から遠ざけた玲於が催促する。
「できるだけ急ぐぞ」
「うん、急ご」
二人は奈弓が追いつける程度の速度で走り始める。
二人が雑談しながら進んでいくのを奈弓は必死で追いかける。当然話す余裕なんてない。
「おっと、嬢ちゃんはここまでだ。こっから先はお嬢ちゃんにはちときつい」
「はぁ、はぁ。な、なんで。私だって二人にはかなわないけれど最低限の力はあると自負しているよ!ついていけるよ!」
「いや、力とかじゃなくてな。どうせ、防衛戦のあとは攻勢に出るんだ。そん時じゃ駄目か?」
「……そんなにも私は頼りない?」
「いや、ほんと、そういうことじゃなくてだな。いや、まじで」
沈む奈弓を前に悠真はしどろもどろになりながら答える。
だが、どうしてもここから先はまずいのである。
女性だけはこっから先に行かせるわけには行かない。
「別にいいじゃん。もしかしたらこの知識が将来素晴らしいものになるかもしれないのだから」
「……いや、この作戦が素晴らしいものにはなってほしくないのだが」
「ダウト」
玲於は悠真の言葉を一刀両断し、奈弓に視線を向ける。
「んっ」
悠真は顔を赤らめ、体を震わせる。
「こっから先は厳しいよ?それでも、進む?」
「あぁ、進ませてくれ」
奈弓は強い言葉でうなずいた。
「よし、言ったね。じゃ、行こ?」
「……マジかよ。……まぁ、これはこれでアリか?よし、行くか!」
三人は地獄への道のりを進み始めた。
進んでいくうちに段々と異臭が漂ってくる。
だが、その匂いは覚悟していた腐臭や血の匂いではない、なにか別の違う匂いだった。
「そろそろ見えてくるはずだ」
見えてきた前線は奈弓が見たこともないものだった。
塹壕が掘られ、男たちはその塹壕の後ろで弓や銃を持っていた。
「おい!追加を持ってきたぞ!」
「くそが!助かるんだが全く嬉しくねぇぞ!」
「はい、流していくよ」
塹壕の上に浮かべた樽の蓋が開き、中身が流れていく。
純白の粘性の液体が。
「あ、あれは?」
奈弓の顔が引きつり、声が震える。
「おち◯ちんとは!」
悠真の大きな声が轟く。
「自然の力と神の力の両方の性質を持ち合わせ命の象徴である!古代メソポタミア文明では自分たちの生活を支えてくれている命と言ってもいいチグリス川とユーフラテス川は水のエンキが作ったとし、彼らは粘土板にこう残している。『父なるエンキはユーフラテスの上に目を向けたあと、襲いかかる雄牛のごとく欲望にあふれて立ち上がり、ペ◯スを持ち上げて射◯して、ユーフラテスを流れる水で満たした』と残されている。それだけではない。『水の神エンキはペニスを持ち上げ、婚礼の贈り物をもたらし、大きな野生の雄牛のように、チグリスの心を震わせ、チグリスが出産のときにはそばに居合わせた』ともある。古代においておちんちんは神聖的なものだったのである。おち◯ちんを神聖的なものとして見ていたのは古代メソポタミア文明だけではない。エジプトでもそういうものとして扱われているのだ。古代エジプトでは創造神アトゥムが『私は私一人であらゆる存在を創造した』とエジプト内部で描かれている。どういうふうに作ったのかと言うと、『私の拳は私の妻となった。私は私の拳と交わった。そうして世界は出来た』と。つまり、創造神はオ◯二ーをすることで世界を作ったとされているのだ。昔においてそれだけおち◯ちんは神聖なものであり、それから出る精◯は神聖水として崇められていた。したがって、世界を作ったとされるオ◯ニーを行い、そこから溢れ出る神聖水は、悪しき悪魔には、これらが有能だと俺らは考えたんだ。そして、俺らの予想通り、精◯は悪魔どもに効力を発揮した。精◯は悪魔どもの進行を食い止め、悪魔たちにダメージを与えた。これから、悪しきものと戦う際、精◯を活用するといい、きっと役に立つだろう!」」
「……最低だ」
奈弓はかろうじてその一言だけを絞り出す。
「最低?貴様!なめているのか!」
だが、その一言は悠真の逆鱗に触れる。
何という理不尽。その一言は至極当然のものと言えよう。
「おち◯ちん様を拝めよ!おち◯ちん様を讃えよ!おち◯ちん様は我らをお救いなるだろう!さぁ!お嬢さんも一緒に我らとおち◯ちん教に入り、おち◯ちん様に祈りを捧げましょう!」
「黙れ、ホモ野郎。我らとかいうな。一人であの汚いもんで泳いでろ」
興奮しながら話す悠真を玲於は蹴り飛ばす。
「……しかたない。行ってくる」
玲於に従い、悠真は塹壕に向かう。
「お願い、やめて。僕が悪かった。帰ってきて」
本当に向かおうとする悠真を玲於は全力で止める。
「……なんだ。この地獄は」
「言ったでしょ?こっから先は厳しいって」
「……思ってたのと違う」
奈弓は顔を手で覆い、崩れ落ちた。
「あ、そこ、精◯垂れた場所だよ?」
「きゃあああああああ!」
奈弓は悲鳴を上げて飛び上がる。
「当たり前じゃん。僕は魔法でやるけど他の人はえっちらおっちら運んでるんだもん。そりゃ溢れるよね。少しくらい考えようよ」
打ちひしがれる奈弓に玲於はとどめを刺した。 「うぅぅぅ、汚れた。私はもう汚れてしまった」
泣き崩れそうになるのをなんとか耐える。
こんなところで崩れ落ちるには行かない。
「おい!悪魔どもだ!今日も来やがった!」
絶望する奈弓の声をかき消すかのような大きな声が響く。
叫んだ冒険者の言うように遠くの方から醜悪な化け物が大量に迫ってくる。
「おら!野郎ども!掘られたくなかったら撃ち落せ!」
悠真はよく響く声で悠真は叫ぶ。
「だってよ!さっさと、撃ち落とすぞ!」
「おうさ」
精◯に満たされた塹壕を通り、急速に速さを失い、高度を落とした悪魔たちに向かって弓や銃を打つ。
「嘘、銃が効いている?」
なぜかはわからないが、銃などの火器は未確認生物たちに聞くことはない。
未確認生物たち効くのは、剣や弓などの原始的な武器だけなのである。
「すげぇだろ?玲於に教えてもらったんだが、弾丸に魔力を込めることで、銃が効くんだぜ?まぁ、原理はわかんねぇけどな。しかも、なぜかは知らんが銃を撃った際の反動も大きくなり、力が強いやつしか使えない代物になってるんだぜ?」
「え、嘘」
今までの戦い方を一変させるような情報に驚きを隠せない。
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