【閲覧注意】2
「そんなはず…ないだろ!?佳乃!」
「聖君、止めよう…僕からも佳乃の様子が普通には思えない…だけど、佳乃だって考えが無いはずがない…何か…あるのかもしれないが言えないの…かも。」
「よ、佳乃…?ご飯、作ったの…食べてね。こんな、佳乃が…細くなっていくのを見るの…私…」
誰にとってもいい事なんて無かった。ボクは大切な人達を泣かせた。最悪だ。
――
14日目。お母さんの作ったご飯を食べて、寝て…吐いた。
もう喉がご飯を受け付けていなかった。そもそもお腹なんて空いていなかった。
どういった話し合いがあったかは分からない。だが、この日、ボクの部屋を調べる事、そしてボクを部屋から遠ざけてみる事になったらしく、ボクはお父さんの説明を受けて、車の後部座席で寝ていた。説明の間、外を見ていたが、特に姿はなかった…と思う。
隣町のホテル…らしく、お父さんがチェックインを済ませると、すぐにボクを運びに戻ってきた。その間も、お母さんはボクを優しく撫でていた。一瞬だけだったが、寝た…んだと思う。
夜までボクは、ホテルで寝ていた。お父さんもお母さんも黙っていた。
そして深夜。目が覚めたボクは、隣を見る。お父さんとお母さんがしっかり居た。トイレに行きたくなった。照明があったから、1人でも行ける…そう思ってトイレに行った。
帰った時だった。部屋の前に手紙が落ちていた。ボク宛ての物だった。思わずしゃがみ込んだ。まさか、ここまで…しかも、部屋までバレてるなんて、思いもしてなかった。
すぐに部屋に入り、震えながら読んだ。だが、思ってたものとは別のベクトルで気持ち悪かった。
内容は、簡潔にまとめると、米塚兄がボクへの謝罪文と反省の意を乗せた物だった。昨日はあんな仕打ちをした人間が、いきなりくるっと変わるわけが無い。すぐにゴミ箱に捨てて、布団に潜った。寝れなかった。
15日目。案の定ボクの部屋には何も無かったらしい。指紋鑑定やら入れたら別だっただろうが、たかだかこの程度で警察様は動いてくれやしない。
お母さんに部屋に戻ってもちゃんとご飯を食べて、気が落ち着いたらお話をする事。 そう約束した。守れる気がしなかった。
自室に戻った。誰も気を使って、ボクに声を掛けなかった。ボクも今、掛けられたら自責で崩れそうだ。
自室に戻って数十分。アイツは来た。もう驚きも、恐怖も無かった。ただ…邪魔だと思った。
入ってくるなり、ボクの前で土下座した。手紙で書いていたような内容を口に出し、ただボクに謝った。何も揺れなかった。
だけど、数時間も続くと、心が揺れた。だけど行動には出さなかった。まだ信じられなかった。
「ごめん…また、来る。許される事じゃ無いのも分かってる…俺、君に許してもらえたら、自首しようと思ってる。……忘れてくれ。また、明日…」
悲しそうな表情で、窓から飛び去った。ボクは…
16日目。今日も来た。何やら袋を持って…
「ごめん、俺のせいでちゃんと飯食えてないと思ってさ…買ってきたんだ。」
なんと言われても、ボクの心には響かない。
「この部屋から出てもらっても構わない。だけど、言わないで欲しい…俺、甘えだろうけど、自分で言いたい…から。」
なんともしおらしい態度がボクを掻き乱す。少し黙っていると、身の上話が始まった。生まれた時から両親は金ばかりで見向きされなかったこと。それなのに進路は決められていて自由が無かったこと。金だけが最優先だと思って生きてきたが、そうじゃない事に気付かされた…とか。
涙ながらに語る話は嘘ではないと思った。だけど…ゆるしてしまって…良いのだろうか。
答えは出なかった。夢姫ちゃんがお昼を呼びに来た。
「うん。いいよ。行っておいで…今日は帰るよ。また…明日、聞かせて欲しい。」
ニコリと微笑んで、ボクを送ると、帰って行った。もしかして、本当に…?ボクが話したり、バラさないと信用されている……という事なのだろうか。
その日はお昼を食べた。みんながやけに心配していたが、ボク自身そこまで頭が回っていなかった。どうすれば…良いのだろう。
17日目。今日も袋を持って来た。昨日とは違う袋だった。
「俺に出来る事ならなんでもするよ。まずは、殴ってしまった所、湿布…とか。」
それだけじゃなかった。ボクに掛けた暴言を全て弁明し、本当にそうは思ってないと、ボクを褒めたり、上げたりした。時折冗談も混じえて話していて。本当に別人のようだった。心の底から笑っているような、何一つ曇りのない笑顔だった。ボクは、少し信じ始めていた。改心したんだ…と。
お昼になると、やはり帰っていった。
下でも、少しずつ空気が良くなっていた。
「数日間何も無かった訳だ…警察か、それとも俺達の存在が効いてるのかもな。」
「あの大男も初日以来現れていないしな。しっぽさえ掴めれば…」
実はボクの所にいる。だけど…もうボクは伝えるつもりはなかった。彼の謝罪を受け入れて、彼は自首する。それで、終わろう…
18日目。今日も袋を持ってきていた。
「…食べるかい?今日は飲み物と、パスタだ。朝から食べるには少し重たかったかな…?ははは…」
「え…?食べて…くれる、のかい?そっか……俺を信用してくれるんだね。良かった…君が食べ終わったら、俺行ってくるよ。本当にごめんな…」
その顔は本当に安堵と嬉しそうな顔で、これで良かったんだと思えてきた。ボクは西山と米塚のような結末にしたくなかった。本当は仲良く終わりたかった。それだけがしこりだったのだ…今、それが…叶う…のだ。
コンビニのパスタだが、特に味に問題も無い。久しぶりの濃いご飯に胃がびっくりしていたが、美味しかった。オレンジジュースまで買ってきてくれてて、気遣いもしっかりしてた。
食べながら、今後改心したらどういう人生を歩むのか熱心に語っていた。彼をどこで変えたのかは知らない。だけど、これだけ…変われたな……ら……ぁ…………?
「……くくっ……!ふふふっ…!」
身体が火照る。この感覚、この熱っぽさ…まさか!?
「引っかかったよ、このバカ!あんな仕打ち受けといて、許せるなんて随分人がいいんだな!?それとも大馬鹿なのかも知れないが!あーあ、いい見ものだ!」
え…嘘、嘘…嘘だっ!そんな、あの仕草も、あの笑顔も、あの話も…!?全部嘘っ!?
1度信用したその男が、一瞬で元のクソ男に戻る。
「どうだ?一瞬でも信じたお前は本当に大マヌケ!そんなんだから声も出ねぇし、弱いんだよ!」
ぐにゃりと視界が歪む。何が何だか分からない。信用って何、嘘って何、あの笑顔は何、演技って何……何なんだよっ!
体が疼く。抑えがたい感情が下から混み上がる。
「おいおい、何興奮してんだよ…今騙されて媚薬を飲まされたんだぜ?後…いや、これは秘密にしとくか?」
騙された大きな絶望感。沸き立つ性欲。失望、怒り、悲しみ、混乱……感情が混ざり合いすぎて、もう何もかも分からなかった。
おもむろに動き出したと思えば、ベッドと左手を。ベッドの脚と右足を紐で固定された。
「さあてと。もう人を信用出来なくなったろ?だってお前に向けてる表情は、本物っぽくても演技かも知れないからなぁ?俺みたいに、ぜーんぶ、な?」
……………………
何かゴソゴソと袋から取り出す。カメラだった。机の上に置いたと思えば、ボクの方へ向けて固定した。
「せっかくだから、壊せる所まで壊したくてな…お前は実に壊しがいがあって楽しいよ。」
おもむろにボクに近づいてきた。もう何をされるか分かった。絶望しか無かった。この状況、この環境でされる事なんて……もう…
「期待してんのか?ド変態が。」
隣に座って、ボクに罵声を浴びせた。もう…なんとも思わなかった。どの言葉も嘘で、本当で、事実で、虚実だから。
少しすると、汚らしい言葉をかけて、ボクを煽った。時々、胸や下腹部を触られた。死にたかった。何よりも、それに反応している事が死にたくなった。
お昼…夢姫ちゃんが、呼びに来るが、出られない。見せられない。こんな…の。
もちろん許可も降りなかった。夢姫ちゃんは昨日まで出てきていたボクが急に出てこなくて心配していた。そりゃそうだ。本当に心が折れた。そんな気がした。
お昼頃、いいだけ人の身体を触って、どこかへ行った。
「ああ、一人の時間も必要だろ?そろそろ限界だろうしなぁ?その為に右手空けてやってるんだぜ?感謝しろよな。もちろん、その映像は残るけどな?高く売れそうだ。ロリっ娘の素人動画…ってな?」
最高潮にのぼる体の疼きを抑えるのは限界だった。心の傷もどんどん深くなる。周りの人への申し訳なさもどんどん加速する。それなのに、肝心のボクは疼きを我慢してる。情けないし、馬鹿らしい。
夕方。有り得ないほど多方向から責められ、ボクは完全に我を失っていた。目に生気は無かったと思う。
「うわ…びっちょびちょ。我慢せずに触ったら楽だったろうに…ほらほら…」
人が我慢していた欲望をいとも簡単に再発させてくれる。殺してやりたいと初めて人に殺意を抱いた。
「ほら、もっとよがり狂え。お薬追加だ。」
拒否しようにも、もうボクの体はボクの意識内に無い。あの時と違い、最後の一滴まで飲み干した。
その時、正義がちょうど晩御飯の、話を持ってきた…
最悪のタイミングだった。ボクの好きな人…挟んで、ボクはこんなにいかがわしい事を…もう耐えられなかった。その声を聞くだけで、ボクの体は跳ねた。擦り合わせるように足が勝手に動いた。
正義が立ち去るまで…ボクは抑えられなかった。
「あーあ、ここまで耐えてたのに残念だったな。こりゃいいネタありがとな?いい脅しの材料にもなるし…あとはちゃんと指入れるだけだ。ほらほら。もう我慢せずにさぁ?」
もう……助からないのかもしれない。ボク…
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