5月22日~6月7日
【閲覧注意】1
※本当に思い出したくないので、簡潔にまとめて書いています。分かりにくい所だらけだと思いますが、ご了承下さい。
襲撃3日目。気分が乗らず、一日をベッドで過ごす。夕方、騒ぎが聞こえて、下へと向かう。そこには1枚の手紙が。ボク宛ての
恐慌状態に陥ったボクは、正義の部屋で一緒に過ごした。
4日目。寝不足だったが、自分の部屋が怖かった。あの後、先生が鍵を閉めたと言っていたが、朝には開いていた。確実にピッキング技術がある…
机の上には無様に裂かれた中学生時代の日記。中身を思う存分に皮肉った狂気めいた手紙と共に置いてあり、嘔吐した。申し訳なさで1杯だったが、体力の限界を迎え、正義のベッドで夜通し寝た。
5日目。学校に行かなくちゃならなかった。憂鬱で仕方なかったが、正義達と離れたくなかった。勉強に集中出来る訳もなく、午後は体調を崩して保健室で過ごした。ボクは少しだけだが、眠ることが出来た。学校は安全だ、そんな気持ちがあったのかもしれない。心配して様子を見に来てくれるクラスメイトを嬉しく思いながら、寮に帰りたくない気持ちを募らせた。
この日は何も無かった。それが心配だった。
6日目。相変わらず何も起こらなかった。だけど、諦めた訳が無い。ボクはそう思うのだが、警察は一旦撤収するような素振りさえ見せてきた。
そして、衝撃の事実が知らされる。米塚家は3人暮らしで、兄の存在は確認されていない…との事だった。
そんな訳が無い。ましてや本人からだけでなく、弟からも聞いている。益々混乱してきた。警察は、ボク達の話を少し疑いかけていた。
7日目。事実の整合性がどうのと言って、警備が無くなった。それと同時に、下駄箱にボクの家の家系図が入っていた。それに、ボクの家の住所も。
ボクは怖くなった。ボクだけじゃ無くて、ボクの周りの大切な人に手を出すつもりなんじゃないだろうか…まるで、西山がしたような仕打ちを…!
現実を認められなかった。ボクは下駄箱に思い切り頭をぶつけた。夢なら良かったのに。頭が切れ、保健室で過ごした。
石田君と先生が警察に行った。
「出そうと思えば、誰でも出せますからねぇ…」
全く信用されていなかった。やはり警察なんて、どこも同じだ。大嫌いだ…
8日目。用心して、5人固まって帰るいつもの下校。前を歩く4人の後ろに隠れるように、ボクは付いていた。
後ろから誰か来る。近所の高校の制服を着た男子高生達だった。風貌はやんちゃでも無いが、真面目そうでもない。
一瞬ちらりと見て、すぐに前を向いた。要らない因縁は付けられたくない。
曲がり角、曲がれば寮といった地点。普通に談笑をしていた3人組がボクの隣を追い抜く気配を感じた。合わせて、端に寄る。
一瞬のことだった。すれ違いざまに肩を強く引っ張られ、その男子高生達の方に向けられた。そして思い切り顔を殴られた。ゴッと嫌な音を立てて、吹き飛んだ。
全力で走り去る高校生達。瞬時に追いかける石田君。何があったか理解できないボク達。
今更じんわりと涙が出た。今まで受けた暴力が比べ物にならないほど、本気の殴打だった。首と頬に激痛が走る。
心配して駆け寄る正義が怖かった。頬に触れた掌が痛かった。
じわ…と嫌な感覚が股にあった。最悪だった。空は黒かった。
9日目。病院にいた。首の筋を違えた事、頬の内出血以外は何ともなかった。心の傷は深くなった。顔も知らない人間に突如殴られたんだ。それが米塚兄の仕向けなのか、それとも偶然なのか。知る由もない。そう思うと病院から出られなかった。ただ、先生と2人、待合室で座っていた。申し訳ない気持ちが無いわけじゃない。だけど、今のボクには正直、無理だった。
先生と病院の方と話した結果、睡眠剤を飲んで、寝ている間に寮へと運ぶ話となった。眠りについて、目覚めれば自室だった。
帰った4人から話を聞いた。先生が全部説明した。
昨日の高校生達は捕まったらしく、停学処分が決まったらしい。全然心が晴れなかった。米塚兄との関係性は聞けずじまいだった。
10日目。外に出られなかった。心が拒否するのだ。説明だけすると、先生が理事長に話をつけに行き、先生と2人、寮で過ごした。両親も呼ぶ事になった。
ちょうど昼頃。食欲が湧かず、もそっとパンを齧っていると、非通知電話が入った。
先生が出たが、変わりない。ボクを詰り、蔑み、馬鹿にするだけ。意味が無いと分かった瞬間に電話を切った。
ボクも初めほど喚かなくなっていた。嫌じゃなくなった訳じゃない。のだが…
夜には両親が到着した。ボクは嬉しかったのと同時に不安が募った。もしかしたら、両親にもターゲットがいくのでは…と。
11日目。嫌な予感だけは当たる。両親に届く尋常じゃない非通知電話とメッセージ。どれもが悪意に満ちていた。
どこから手に入れたのか知らない。知りたくない。
「死ね」「消えろ」「娘はゴミ」「カス家族」
それを見て顔を陰らせる2人が見ていられなかった。
もちろんボクへの嫌がらせも忘れていない。今日はどこから取ったのか知らないが、この間の殴られたあとの写真だった。
「こんな恥ずかしい写真ばらまかれたら困るよな? 」
そんな気持ち悪い文と一緒に…だけど、これは証拠にも…ならないか…
12日目。益々沈んでいた。ぼんやりとした目でのそのそと起きたのを覚えている。窓が開いている事に気付いたのだ。ハッとなったが、目の前に視線をやると、更に驚いた。やけに大きく、そして細身な…整った顔立ちの男が立っていたからだ。
ボクじゃ勝ち目がない。そんな事は分かっていた。すぐにでも逃げないと…ショートカットで正義に通話をかけようと操作する。
それに目敏く気付かれたのか、ベッドに飛び乗り、ボクを跨ぐ形で近づいてきた。咄嗟に顔を守り、スマホを落としてしまった。
「おい…これは何だ?助けを呼ぼうとしてんじゃねぇぞ…」
低く、囁くような声で大男がそういった。そして確信した。この声、電話の声と同じだ…て事は、米塚の…!
あの身内だと分かった瞬間に気持ち悪くなった。嘔吐くような咳が出始めると、米塚兄に首を締められた。
「気持ち悪いから吐くな。お前の汚物なんざ見たくねぇんだよ。ただでさえゴミなんだから、それ以上価値下げんな。」
淡々と吐かれる暴言に心が軋む。
「いいか、絶対に助けを呼ぶな。この部屋から出るな。さもなくばお前の関係者をめちゃくちゃに壊してやる。…弱虫のお前からすりゃ、そっちの方が救われるか?」
そ、それだけは…!首を振る。
「そうかそうか。そんなに自分を責めるのが好きなら止めねぇよ。早く壊れねぇかな♪」
狂ってる。狂った目をしてる。だけど、逆らえなかった。何度もくぐり抜けてきたボクなら…きっと、耐えられる。
お昼も、晩御飯も、呼びに来てくれるお父さんが、お母さんが、正義が…全部無視しなきゃいけないのは苦痛だった。手を伸ばせばここに犯人が。だけど、手を伸ばしているうちに逃げてしまうのだ。だから、たまたま誰かが気付いてくれるまで、ボク…耐えなきゃ…
一日中、暴言の嵐を聞き続けたボクはおかしくなっていた。どんな行動も、どんな容姿も、どんな過去さえも馬鹿にされ、蔑まれ、家族や友人まで蔑まれ…ボクのプライドは、自尊心はボロボロだった。深夜に帰っていった。意味は無いと知っていたが、窓の鍵を閉めて、少し泣いた。
13日目。今日も来た。朝、夢姫ちゃんがボクを説得しに来た。
「佳乃ちゃん、苦しいのも分かるし、塞ぎ込みたいのも分かる。分かるよ…だけど、私達佳乃ちゃん抜きじゃ動けないし、みんな心配してるの。私も、寂しい…もっと…!佳乃ちゃんと楽しく過ごしたい…!」
「昨日は何も届いてないし、何もされてないの。だから、今しかないんじゃないかなって。一緒に考えて、一緒に戦お…?……私、待ってるから。佳乃ちゃんなら、きっと出来るよ…」
最悪だ。ボク、あんなに考えてもらってるのに…動けない、なんて。
「あーあ、馬鹿だねぇ…お前らの探し人はここにいるのになぁ?それにしても、最悪だな。あんなに仲間想いの優しい子の言葉を聞いても出てこないんだからなぁ?」
もう…どうだっていい。昨日コイツが帰ってからまとめた日記でも見せれば1発だ。ベッドから出て、すぐに走れば…
「おい、動くなよ。命令違反は許さねぇぞ?」
一瞬止まって、フェイントをかけて手のバネで身体を前へ…
その瞬間に目の前に腕がでてきた。その勢いのまま首にぶつかり、息が止まる。
「そう焦んなよ、大丈夫さ、お前が壊れたらゆっくりアイツらも壊してやるからさ。お仲間に手、出されたくねぇなら大人しく壊れるのを待っとけよ。お前が耐えさえすれば、長持ちするよなぁ?」
こんなの、現実じゃ…ない……はずなのに。
その後、麻生君、石田君、正義…みんなの心配する気持ち、ボクを想う気持ちを聞いた。ボクは、ただこの隣のクソ男の1人にも勝てない屑だ。申し訳ない気持ちがボクを苛む。
時間は過ぎて、夜。ボクはみんなの暖かさと、隣の暴言で狂った。思い切り腕を噛んだ。
「お、いいぞ、狂ってきたか?最高だな、もっとやれよ。ほらほら…!」
そう言われるとゲンナリとする。こんな馬鹿馬鹿しい事しても…何にもならない…
「止めるんじゃねぇよ、ほらほらもっと怒れ。もっと泣け。もっと苦しめ…!」
何度目か分からない鳩尾への一撃。死にたくなるほどの苦痛が身体を抜ける。もう殴られても、暴言を言われても、段々何も思わなくなってきた。ボクは人の優しさを無碍にできる屑だ…
その時、米塚兄の電話が鳴った…と思う。急いで米塚兄が出る。少し焦る様な口調だった。
「…じゃ、今日はここまでだ。いいか、絶対に言うなよ。どうなるかは、お前が一番わかってるだろ?」
そう言うと窓枠に足をかけ、消えた。そのまま死ね。
数十秒後。ドアから音がした。鍵の開く音。久しぶりの光に目だけ反応するが、体はビクとも動かない。
「……!大丈夫か!?」
反応の薄いボクを見て、正義は一目散に駆ける。久しぶりの正義…なのに、ボクは泣きもしなかった。涙が出なかった。思い出すのは正義の語り。ボクはそれすら受け入れられなかった…
「何があったんだ!?何も無かった、なんて事ないだろ!?」
正義に詰められるが、頭はおろか、首すら動かない。でも、今…しか、
外を見た。外には覗くクソ男の影。口に手を当て、言ったらどうなるか分かるなと脅される。
「佳乃…!親友の間に隠し事は無し…だって…言ったろ…?」
もう限界だった。ボクはその言葉が胸に深く突き刺さった。親友なのに、全部話したら…正直に答えたら…
迷っている時点で、正義に面目が立たない。
ボクは…………首を横に振った。
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