宣戦②


ルールは普通の鬼ごっこに少しルールを付け足したものだ。

①鬼が捕まったら10秒の待機時間後に鬼として追いかける。

②逃げる側は日高さんに最低限1人、手が触れていること。

③鬼の交代=日高さんも付いてくる。

➃味方での日高さんに触れる人は交代しても良い。

……

「こんなところだ。つまり、逃げる側には日高さんと走れる機会を得られる。先に逃げるのは君たちでいい。先生が帰ってくるまで逃げ切れば日高さんを渡さなくていい。簡単だろ?それに、こちらから3人、人を貸す。そうすればイーブンさ。とびきり足の早いやつを貸そう。中々いい条件じゃないか?」

「日高さん。勝手にルールに入れたのは悪いと思ってる。でも、俺達も君と遊びたいんだ。いいかい?」

…私の為にルールを組み込んでやってくれたみたいだし、いいかも。

頷く。

「よし決まりだ。」

九条君はニヤッとする。何か企み事が成功したかのような顔…

「…そういう事か!」

石田君、何かに気づいた模様。

「さっき言った3人だ。よろしくしてやってくれ。」

「よろしくな!」

爽やか笑顔である。良い人そう。

「なるほどな…」

正義まで何か気づいたよう。ルールを理解するのがそんなに難しかったかな?

「それじゃあ10秒数えたらスタートだ。範囲は学校全体。よーい、スタート!」

その瞬間私は両足に浮遊感を感じた。

「行くぞ!」

「あー!気づかれたぞ!」

「やはりか…」

正義の脇に抱えられて教室から出ていく私。石田君もその後ろをつきます。

咄嗟の事態に頭が付いてこない私。でもこの体制だと話すことも一苦労です。

諦めてじっとしておきます。この状態、普通の男女だと相当な筋力が必要でしょうが、正義が私を持ち上げるなど、簡単なことでしょう。身長差40cm、体重差50キロは伊達ではありません。ゆらゆらーっと体の力を抜いて揺られておきます。

「おい待てぇ!味方を置いていくなぁ!」

「てめぇら味方じゃねぇことは分かってんだよ!離れやがれぇ!」

味方なのに味方じゃない…どういうことでしょう?

「一旦離れた方がいいな…体育館2階に集合だ。散開。」

「了解だっ」

走りながら話し合う2人。もうお任せです。というか、この抱えられている状態も良いかもしれません。ちょうどいい揺れで眠たくなってきます。

「おい佳乃!今からもっと飛ばす!気ぃ張れよ!」

びゅん。それが的確な表現でしょう。もう早いのなんの。

さっきよりも揺れますがどうってことはありません。意識はもう寝る方向で落ち着いています。あ、もうだめです。ねます。

――

「おい…佳乃。お前、今回狙われてんだぞ?呑気すぎるだろうよ…」

「…ごめんね?」

「本当に寝てたのか…ある意味すごい奴だ、ホントに。」

マジで寝ました。気づけば体育館の2階で今下ろされて起こされたところ。

「遊んでる間に寝るなんて、失礼だよね…」

「まだ遊んでると思ってるのか…?佳乃、それは自覚無さ過ぎだろ…」

「そりゃ寝れるな。いや、人に抱えられながら寝れるのはおかしいか…」

言われたい放題です。

「佳乃。説明するぞ…今回はお前の為のレクリエーションなんかではない。」

「かんっぜんに私欲からの鬼ごっこだ。」

「まず、ルールがおかしい。何故佳乃に手を触れていないといけない?それは簡単。あいつらも触れたいと思ってるから。それに手である事は提示したが、佳乃の何処を触れとは言っていない…つまり、分かるな?」

そう言われてみるとそうである。結構ピンチな事に今更気付く。何処触られたものか分からないという訳…か。

「それにだ。あいつ等は6人での競技を提案してきた。普通に3人同士でいいと思わないか?そうしなかった理由はこちらにスパイを送り込むため、だな。あの三人、足が速くて爽やかな印象を持たせる…それだけなら第一印象は良いはずだ。だが、今回の状況を考えるに不自然だ。足の速い奴らを対等にやるつもりなら、渡す訳が無い…だろ?」

…そうかも。

「そしてルールに不自然についたもの…味方同士での触れる相手は変更できる…これは確実にあいつら3人に佳乃を連れさせてわざと遅くなるなりこけるなりしてタッチさせる作戦だと思う。」

…そうだろう。もしかしなくてもすごい不利な状態にされている事が分かる。

「この作戦を練った九条とやら…相当なものだな…」

石田君さえも感心させるほどの頭脳。正直敵に回っている今とても、怖い。

「とにかく3対9…佳乃は入れないから2対9での勝負…正直勝ち目は薄い…」

「だが、やるしかない…だろ?」

正義は立ち上がる。

「そろそろここに隠れているのも不利だろう。行くか。」

「了解だ。」

動き始めるよう。

「そうだな…さっきまで俺が抱えていたし、俺を追いかけるはずだ。」

「じゃあ俺が日高を連れよう。走れるか?」

手を差し伸べる石田君。こんな事言ってる場合では無いのでしょうが、とても恥ずかしいです。

俯きがちに手を握れば、しっかり握り返してくれます。

「さあ…行こうか!」

第2ラウンド、開始です。

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