邂逅
門をくぐる。第一期生だからか、人通りが全く無い。といってもクラスは機械科1クラスだけで40人。それに校門前でモタモタとしてたから始業開始10分前ほどだったし、もしかしたら皆教室に行ってるのかも知れない。
そう思うと気は軽くなるものである。正義の後ろに隠れるのをやめて、校舎を見渡しながら歩いていく。
「やっぱり、新設校だから綺麗なんだねぇ…」
「そうだな。今までの分、ゆっくりしたいし、丁度良い所が見つかって良かった。」
これはのんびりできそうである。取り敢えず正義とならゆっくり出来そう。
後は他の生徒なんだけど…
教室は何処だったかと見渡していると…
…なんかこっちを見てる人がいる。目があった途端に窓を開けて何か呟いてた。
人がワラワラと集まり始めた。なんだか怖くなってきた。正義の背中にゆっくりと縮こまる。
正義がそちらの目線に気づいたようで。私の代わりに話しかけてくれた。
「おはようございます。どちら様でしょうか?」
「えっと…s校の生徒ですかぁ?」
男子生徒と思われる同じ制服の子が問いかける。
「はい。そうです。どうかされましたか?」
「コレが重要です。」
一気に男子生徒の顔がキリッとした。何か重要な事を聞くみたいな顔だ。
もしかしてここはs校じゃなかったのかも。それともs校の生徒だとマズい秘密があるのかも。ドキドキが止まらなくなってきた。
「あなたの後ろにいる、その小さい女の子は…」
まさかの指名である。いじめられてたこと知ってたのかな、それとも中学の知人の関係者がいたのかな…もしかしてもう高校生活を楽しめる可能性は無くなったのかも。
「s校の生徒ですか?」
「そうですけど…それがどうされましたか?」
正義も怪訝そうに答える。私も身構える。
「そう、ですか……聞いたか?」
なんか後ろの人達に話し掛けてる。初日から物騒なご挨拶が待ってるんだろうか。アレか。余所者への洗礼だろうか…
「ヤッタァァァァァォァ!!天使、降臨キタァァァァ!」
それはもう大きい声で叫んだ男子生徒。後ろの人達も騒いでいるようで、流石の正義も唖然としてる。私はいきなりの大きな声にしゃがみ込んでいた。
「本当なんですよね!?」
興奮冷めやらない雰囲気で話し掛けてくる男子生徒。もう何がなんだか分からない。何が天使…?怪しい宗教か何かか。
「せーぎぃ…」
か弱い声しか出ない。元よりか弱いが。
「あ、ああ…そうだ。」
なんとか持ち直した正義。果敢にも会話を続ける。
「その天使さんはあなたの彼女なんですか!?」
「違うが…佳乃は俺の親友で、俺は佳乃の用心棒みたいな感じだ。危害を加えるなら容赦はしないぞ?」
「よの、っていうんですね!いやいや、滅相もない!むしろ愛でたいです!」
ハイスピードな展開について行けないんですが…取り敢えず何故天使扱いなんだろうか。小さい自覚はあるが、天使だった自覚は一切持ち歩いてない。
「…取り敢えず、会場に向かう。絶対に離れるなよ?絶対だ。」
正義が念押しに確認してくる。離れる気など滅相もございません。怖いもん。
多分、アレがクラスメイトなんだろうなぁと思うと不安が別ベクトルに向いて降り掛かってくるのであった…
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