校門前にて…

…そしてきたる入学式の日の朝。遥々と荷物を持ってきた引っ越しも大方済んだ。まだ1週間ほどしか経ってないけど、この部屋も随分落ち着ける場所になってきた。



2階建ての寮になっていて、あんまり利用者はいない事を想定してか、1階は男子、2階は女子の合計10部屋しかない。そのちんまりとした空間がとても落ち着く。


入寮者は私と正義、あと1人いるらしいんだけど、まだ出会ってない。…人、ホントにいるのかな?

寮の外で待ち合わせして、学校まで正義と歩く。


「この辺、分かるか?」


正義が私に問いかける。


「受験の時にも来たんだろうけど…緊張もしてたし、あんまり覚えてないよ。」


とにかく分かるのはとてつもない田舎って事ぐらい。

寮と学校は目と鼻の先って言っても良いぐらいに近かった。でも、その距離でさえ、正義がいないと不安だった。


校門前になって、物凄い不安に駆られてきた。もしかしたらまたいじめられるんじゃ、話せない奴なんて絶対良い気持ちは持たれないよね、正義に迷惑じゃないかな…考え出すと止まらない。

不安が顔に出てたのか、正義は励ましてくれた。


「心配すんな。俺がいる。」


「でも…迷惑いっぱいかける気がするの。話せないし…」


「まだそんな事考えてたのか?俺はお前の用心棒だ。任せろ。」


信頼はしてる。でも、でも…足がすくんで動かない。

しびれを切らしたのか正義は


「なら選べ。今から俺に担ぎ上げられて注目の的になりながら入門するか、俺の後ろに隠れながら付いてくるか。5秒で出発するからな。」


「うー…分かった。行く。」


そう言われると動かざるを得ない。勇気を振り絞って…悪い妄想は忘れて正義の後を付いていったのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る