プロローグ②

遡る事数カ月。

…いじめられなくなって、1ヶ月。

多分正義が派手に喧嘩したからだと思うけど、私は皆から距離を取られるようになった。「日高(私)に危害を与えれば聖(正義)に半殺しにされる」って認識になったみたい。

実際に私を虐めてた主格達はとっちめられてたし、いじめのリーダーがいなくなったら、次の力のあるリーダーが出来て…という風にどんどん色々な人に虐められては正義にふっ飛ばされている所をよく目にしたんだ。

いつの間にかそうやって行くうちに私に危害を加える人はいなくなり、先頭だって虐める勇気の無いいじめっ子だけがハイエナのように弱みを今か今かと狙っている状態になった。

…私の力じゃこうはならなかった。もちろん、暴力は良くない解決方法なのかも知れない。でも、そんなこと、私はどうでも良かった。この苦しみから逃れられるなら、何でも良かったんだ。

正義は唯一、私が虐められていることに異を唱えてくれたんだ。あの時は痩せていて、いかにも真面目な勉学優秀な感じだったんだよね。

でも、立ち上がってくれた。正義感あふれるヒーローみたいだった。俺に任せろって言ってね。

最初は私と一緒にいじめのターゲットになった。でもそこからが違ったんだ。

私は逃げた。耐えた。そのうち終わるんだって信じて。

正義は抗った。鍛えた。俺が守るんだって。

そうして1年。正義は約束通り守ってくれた。私は…頼った。正義さえいてくれたらいいんだって。他の人は信用しちゃ駄目なんだって。

共働きの両親にも忙しいだろうからって無理やり解釈して言わなかった。日に日に人と話すのが怖くなって、ついには両親と正義以外と全く話せなくなった。1人の時に話しかけられるだけでクラクラする。先生に呼ばれただけでも過呼吸を起こす。…もうめちゃくちゃだった。

そして今。いじめは収まったのに、私は私じゃないような空っぽの存在になっている気がしたんだ。

もう夢もない。目標もない。だから進路だってどうでも良かった。正義に付いていこう。その程度だった。

正義が選んでいる学校は4県も離れた私立高校。どうやら新設校らしく、第一期生の募集があったんだとか。

誰も行かない高校で関わる人も少なくなる。それは理想的な進路だ。機械科ってのはネックだったけど、最早どうでもいい。

「ここにする。」

少し…楽しみだ。

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