第二章 その十六 家族の家
乾いた服に着替え、美玲が帰宅したのは深夜1時を回っていた。
「まだ1時なんだ。」
あまりにも多くの事が起き、今日一日で数年過ごした気分でいた。
「まだ1時?もう1時だよ。何回電話しても出ない、お父さん心配したのに!」
父ヂーミンは寝ずに美玲を待っていてくれた。珍しく狭いリビングには母エミリも座っていた。
「あ、ごめん。こんなに遅くなっちゃった。お母さんもごめんね、体調どう?」
そう聞くとお母さんは笑顔で「大丈夫」と答えてくれた。
「美玲こそどう?楽しかった?」
とお母さんが聞き返す。
「美玲はいつも頑張ってるだからね、こうやってたまには自分で遊ぶもいいんだよ。でもあんまり遅いは心配するだからね、電話には出なさいよ。」
とお父さんが笑う。
『帰ってこれた』。
その嬉しさがこみあげ、美玲は涙が溢れそうになった。しかしそんな温かい両親にこれ以上心配をかけたくなく、「うん!」と元気に返事をしてシャワーを浴びに風呂場へ向かった。
まだ少し血の染みが残る服を見えないように畳みシャワーん浴びる。そしてシャワーの水音に隠れるくらいの声で泣いた。風呂場から出た後に残らないように涙は全てここで出してしまおうと、とにかく身体に付いている男達の血液と自分の涙を流し続けた。
そこでふと気付く。『顔には血が付いていない』。涙で崩れたはずのメイクも落としてある。
「あ、新屋敷さんか。」
その瞬間美玲の涙は止まり、自然と笑顔になり、全く別の新しい涙が溢れてきた。最悪の一日が、新屋敷と出会えた事で全てチャラになった気分になった。
シャワーを浴び終えリビングに戻るとヂーミンとエミリが横並びで座って美玲を見ていた。
「ごめんね、ほんとに遅くなって。もう寝ても大丈夫だよ。」
美玲がタオルで髪を拭きながらそう言うと、ヂーミンは「そこに座って」と2人の目の前を指した。
「改めて怒られるのか?」と思い美玲が座ると、2人の口から思いもよらない言葉が出た。
「美玲、実はね、もうここから引っ越そうと思うんだ。」
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