第二章 その十四 青のり付いてない?

レンジで温めた冷凍のタコ焼き。美玲はベッドから起き上がり、小さなテーブルの前のソファに座った。


「・・・・多くない?」


テーブルのタコ焼きは大皿の上に山のようになっていた。この部屋には美玲と新屋敷の2人。


「アタシ、こんなに食べれないよ?」


「大丈夫だよ、どっちにしろ俺全部食えるから。ひゃっはっはっ!」


この男は先程までフライドチキンを食べていたはずだが。それに、ホットココアも飲んでいた。それは美玲も同じなのだが、『食べ合わせ』と言う感覚と目の前のタコ焼きの山に更に食欲が無くなっていく。


「図々しいけど、お茶かなんかある?ちょっと、気持ち悪い。」


「おー、そうか。」と言って新屋敷は冷蔵庫からペットボトルのほうじ茶を持ってきてくれた。もう彼の口の中にはタコ焼きが数個入っている。


「マジで食いたくなかったら食わなくていいからな、そろそろ服も乾くし。そしたら帰りな。」


と新屋敷は部屋のテレビの電源を入れた。部屋の割に大きなテレビだ、無音だった部屋にスポーツニュースの音が響く。美玲それだけでふと日常に戻ったような気になった。


「王さん、美玲さん、どっちで呼んだらいいかな。」


初めて新屋敷の口から自分の名前が出て美玲はドキッとした。


「え?あ、美玲でいいよ。そうか、知ってるよね、名前。呼び捨てでいいよ、アタシ2コ後輩でしょ?」


「ひゃっはっはっ!人にハイキックかましといて今更先輩後輩言うなよ!そっちもタメ口じゃねえか!」


美玲の顔が真っ赤になる。


「まーいいよ。んじゃ美玲な。帰る前にちょっと聞いときたい事あんだけどさ。」


そう言うと新屋敷は割り箸をテーブルに置いて、ティッシュで口の周りのソースを拭いた。「青のり付いてない?」と美玲に歯を見せて「ついてない。」と答えてもらうと「よし。」とティッシュをゴミ箱に投げる。


「美玲、両腕にタトゥーの入った女に心当たり無いか?」


新屋敷の笑顔は消えていた。

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