第一章 その三 通勤の道
あやかしを殴れる男、鳴神花一。
細身で高身長、髪型は短めのドレッドに短めのアゴヒゲ。白のシャツにベストと細めのタイ。靴はウィングチップのドレスシューズ。格好だけはバーテンダーらしいが彼はカクテル一つ作れない。
持ち物は財布とタバコのみ。この日もスマホを家に忘れてきている。
「あ、ほんとだ。」
取り憑いている怨霊の私の声が聞こえたようでスマホを忘れた事に気付いたようだ。
「家出る前に言えよバカ幽霊。・・・まぁ使わねえからいいけど。」
「バカとは何だこの野郎。死んでも頭だけはお前よりいいわ偽バーテンダー。」
私を睨みつけ偽バーテンダーがコンビニの前に立ち止まる。タバコを吸う為だ。
「お前な、たかが8分の通勤なのにタバコ一本我慢出来ないのか?現時点で遅刻してるっていう自覚無いだろ。」
「うるせぇな、こんだけ遅刻してりゃタバコ一本分の遅刻なんてどうでもいいだろ。」
コンビニから出てきた客が訝しげに鳴神を一瞥する。それもそうだ、周囲の人間には私坂田は見えていない、鳴神はただ独り言で悪態をつく不審者でしかないのだ。
「しかし鳴神、今更言うのもなんだが私に対する返答の時、全く声のボリューム落とさないよな。」
本日12本目のタバコを灰皿に投げ入れ鳴神が答える。
「何でお前にも知らねぇ人間にも合わせる必要があんだよ。嫌なら話しかけんじゃねぇ。」
この態度の悪さ。こういう人間が生活していける世の中は本当に不公平に出来ているな。と、死んだ私はいつも痛感するのだ。
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