第04話 流れついた祭り

待ち合わせ場所を改札口を出て左側に位置する駐輪場にしていたので、先に着いた私は友人と待っていた。自転車の数は、その駐輪場に収まりきらないほどにあり、明日まで続く祭りが理由であろうことは火を見るよりも明らかであった。行く末を阻むような"人だかり"が、横に列をなしており途切れそうにない。


スマートフォンに新たな通知が表示された。隣駅まで友人は来ているそうで、時間にして2,3分といったところ。イヤホンから流れる曲が終わるタイミングと同時くらいといったところだ。まるで聴いている曲が何かを知っているかのようにタイミングが合いすぎているので、こちらとしても都合は良かった。


そして、友人が姿を見せた。こうして会うのは5年振りではあるが、お互いこれといった変化は無く、さっきまで傍観者として眺めていた人だかりに溶けていった。それにしても歩きにくいんだろうと思っていたが、意外にもそんなことは無く、2人で他愛のない話をしながら、のんびりと歩いていた。


お互い住む場所も働く業種も異なるとはいえ、根は何にも変わっていないようで、話す内容は昔とそれほど変わらない。だからこそこうして長い付き合いなのだろうか。余計に内面外面を飾らなくてもいいというのは大きな要素で、こういった部分で変に気を遣うのは疲れてしまう。ありがたい存在だ。


いたる所に出店が立ち並んでおり、我々もどこかで買おうと話をまとめて、とりあえず焼きそばを1つずつ購入し、人の少ないところまで歩きガードレールに腰かけて食べ始めた。万人受けするよう、味付けはちょうど良い塩梅で、ソースに絡む麺が絶妙。祭りならではの高揚感が、おいしさを引き立てる。


友人もあっという間に食べ終え、私を置いて祭りの人ごみに駆け込んでいった。程なくしてかき氷を2つ手にした姿が、そこにはあった。確かに夏の定番、祭りの定番と言えばかき氷だなと。礼を言い、そのかき氷を受け取った。友人もガードレールに腰かけて、緩やかに涼を楽しんだ。


かき氷のシロップは色と香りで味を分けているが、その肝心の味は種類に関係なく変わらないらしい。だから、イチゴ味もブルーハワイ味もメロン味も、息を止めて食べるかき氷は基本的に同じ味に辿り着く。友人の唐突なトリビアは夏の風情を台無しにするが、友人はそれを狙っているようでもあった。面白い人だ。


焼きそばとかき氷が入っていた容器を臨時で設置してあったゴミ箱へ捨て、両手の自由を得た我々は、また祭りで賑わう渦へ足を運ぶ。夏らしい時間というのは、当然ながら夏にしか味わえない。巡る季節は秋に向かうが春には向かわない。そう思うと、親しい友人と過ごすこの時間は、何にも代えがたい。

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