第5話 シナリオが変わってしまっている世界
「大丈夫じゃ無いだろう? これだけ色々変わってしまえば」
アルフレッド殿下から、バカなのか? という感じで言われてしまう。
「たはは。やっぱりそう思う?」
いつもの放課後、いつものアルフレッド殿下の研究室。
私たちはやっぱりここでくつろいでいた。
「まぁ、監視は仕方ないだろうな」
あれ?
「アル。私、監視の事なんて言ったっけ?」
言わなかったと思うけど。
「あのな。末弟だけどこれでも一応王弟なんだぜ。情報くらい入るさ」
なるほど、なるほど。
こんな会話をしているけど、私たちは相変わらずだ。
私はソファに寝転がってそこいらに落ちてる本を読んでいるし、アルフレッド殿下は机で何やら書き物をしている。
執務室とか、あてがわれて無いのか? ああ、7年前のあの時に側近候補も居なくなったっけ。
そんな事を思いながら本を読んでいると、アルフレッド殿下が立ち上がった気配を感じた。
「あっ。待って、お茶なら私が入れるよ」
本を置き、起き上がると、すぐ目の前にアルフレッド殿下がいた。
「本当は、ここに来るなと言いたいのだが。もう、どこに居ても同じだろう?」
ソファに座り直し私のすぐ目の前に跪いた形でいるアルフレッド殿下をじっと見詰める。
いや、何を言われているのか分からない。
「オリビアは、ヒロインをイジメてないか?」
ん~。そうだなぁ。
「ゲームではイジメてるよ? 私はしてないけど」
「そうだな。だが、噂ではイジメていることになっている。あいつらの婚約者たちもイジメる暇などないだろうに、そうなっているからな」
あいつら……、王子殿下たちをあいつら。まぁ、甥っ子たちだからねぇ。
「おそらく、おまえが言う乙女ゲームとやらと同じく、婚約者の令嬢達は断罪されるだろう。ローレンスが正気に戻った以上オリビアが断罪されることはなさそうだが」
ゲーム補正が付いて無ければ……だろうけど。
「大丈夫だよ。あのゲームの悪役令嬢たちは、断罪されてもせいぜい社交界追放だもん。オリビアに至っては、まだ社交界デビュー前の子どもの所業として、学園の夏休み中の自宅謹慎だし」
他の乙女ゲームと違って、ざまぁが緩いんだよね。
実際は、社交界追放なんて事になったら大変なんだろうけど。
「そうか。だが、問題は断罪の後……あっ、いや」
断罪の後?
「何かまだあるの? って、私まで断罪されたら、隠しキャラルートが開くんだっけ」
おおっ、忘れていた。
全てのルートが終わった後、もう一度ゲームを始めると、イケメンで大人の雰囲気を
アルフレッド殿下の事だけど……。
「ふと学園の廊下ですれ違ったアルフレッド殿下とお互い惹かれ合うんだっけ。アルフレッド殿下は、自分の事を知らず、ぎこちないながらも一生懸命、礼を執るヒロインを好ましく思うんだわ」
乙女ゲームの中の話なので、あえてアルフレッド殿下と言ってみた。
「いや、俺ルートの話じゃない。というか、どうしてまともに礼も執れない奴に惹かれるんだ、俺が。謎が多すぎるぞ、このゲーム」
「なんでって、平民の女の子が頑張って貴族のマナーを覚えようとしているところ?」
「頑張っているのか?」
「頑張っては……いないわね。
なるほど。って納得した顔をしているわね。王宮にまでも、噂になってるのか。
アルフレッド殿下は、ポンポンと私の頭を叩いてそのまま自分の方に引き寄せる。
あれ?
「じゃあ。俺が攻略されないように、傍にいろ」
「攻略されないようにって、アルフレッドルートに悪役令嬢いないよ?」
いちゃいちゃラブラブするだけの、ボーナスステージみたいなもんだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。