第3話 学園のお昼休み
王立学園には緩いながらにも、ちゃんと身分制度がある。
だから私の目の前に見える光景は間違っていると言えるだろう。
17歳になったアイザック第一王子殿下と16歳になったフィリップ第二王子殿下。
そして私と同じ歳の乙女ゲームのヒロイン、ベリアル。
中庭の一角にあるベンチでベリアルを真ん中にして3人で座り、イチャイチャしている。
ちなみにお二方とも、幼い頃から決められた婚約者様がいらっしゃるというのに。
特に1年後に立太子を控えているアイザック殿下の婚約者様は、婚約者に決まった瞬間から王妃教育をされていて、この昼休みも姿を消している。
なんというか、兄であるローレンスの首にネックレスを掛けることが出来て良かったわ。
アルフレッド殿下が作ったネックレスを掛けた途端、スッと目が覚めたみたいにベリアルから離れて行ったもんね。
「困ったものだな、殿下たちにも」
自分の事は棚に上げて、兄は私の横で中庭の光景を見ている。
いや、昨日まであそこにあんたも居たじゃん。
「仕方ないのでは? この国でも貴重な光属性の回復魔法を使えるのだもの」
「それにしても、何も立太子前のこの時期に……」
なんか色々、複雑そう。面倒だから聞きたく無いけど。
あら? 殿下たちを引き連れてこちらにやって来るわ。
私は
それを何と勘違いしたのか、ベリアルが話しかけてきた。
「こんにちは。私相手にそんなにかしこまらなくても良いのよ。ローレンス」
兄は、礼を執ったままベリアルをガン無視していた。
いや、父親に爵位があっても下の者から話しかけるなんて不敬もいいところなんだからね。しかも呼び捨てだなんて、上の立場の令嬢でもしない。
「ああ。可哀そうに。この子の所為ね。妹だか何だか知らないけど、この子があなたの行動を制限しているのだわ」
私を見ながらそう言って、ベリアルは殿下にすり寄るようにしてアイザック殿下に告げ口をしていた。
なんだか空気が微妙になってるわ。
「発言を、お許し頂けるでしょうか?」
兄が、殿下たちに許しを請うている。
「許可する」
そう言ったのは、アイザック殿下だった。
「私の行動の責任は妹オリビアの所為ではございません。私は学生とは言え臣下の身、殿下方が想いを寄せる女性の傍らに侍る事など、恐れ多い事にございます」
殿下方をまっすぐ見据えて言う。
「ああ。そうだな。しかし」
アイザック殿下が言うのをさえぎって、更に
「私は
そう進言していた。
乙女ゲームのヒロインが、魅了を使っているかどうかは分からないけど、魔法を遮断した途端、まともになったものねぇ。ローレンス兄様も。
呆然としている殿下たちとベリアルを尻目に、兄はさっさとこの場を立ち去ろうとしていた。
いや、置いていかないで。
私も慌てて、御前を辞する礼を執り兄の後を追った。
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