第36話
「アルファは高い性能を示しながら、
「そうです、そこで博士はアルファにチューリングテストを実施する事を提案しました」
「チューリングテストとは、質問者がコンピュータと人間に対して様々な質問をして、その回答からどちらがコンピュータでどちらが人間かを言い当てるというテストです。当てられなければそのコンピュータは人間と同じくらい人間らしいと判断できます。この人間らしさを心だと考える学者もいます‥」
「でも、そのタイミングでのテストは
章生が考えながら言うと、綾可は待ち構えていた様に答える、
「博士には別の狙いがありました」
「別の?それは」
「アルファにスケープ能力者を接触させる事です」
「そういう事か‥アルファに心があるなら、スケープ能力者はアルファとコミュニケーションが取れる!」
律華は思わず声を上げた。
「博士は
結果は狙い通りでした、ロンリはアルファの心と接触する事に成功した。そして、操作不能になった原因を突き止めました」
「その原因とは?」
色めきだつ章生に対して、綾可は変わらず冷静だった、
「アルファは、怖かったんです」
「怖がっていた?コンピュータがですか‥」
「そうです、突然、世界に産み落とされたアルファは、次々に流れ込んでくる情報を吸収し、凄まじい速さで成長した。その過程でアルファは自分の置かれた状況を知り、怖くなった。それで外界との接触を拒絶する様になったのです」
「状況が怖くなったとはどういう意味ですか?」
「人工で心が作れる、それは平和利用されれば素晴らしい技術です。でもそれを高度な判断能力を持った無人兵器として使う事も出来る。
開発陣の一部にはロボットを武装兵器として海外に売り込もうと考えている人達が居ました。アルファはその人達の悪意を感じ取って、自分が兵器に利用される可能性に恐怖した‥」
「それから、どうなったんですか?」
「問題が発生しました、アルファとロンリの心が強く
この綾可の話に章生は聞き覚えがあった。
「5年前の事故ですね、博士はどうやって論里さんを救ったんですか?」
論里が否定する、
「博士じゃないわ、あたしを現実に戻したのはアヤカよ、アヤカは危険を承知でアルファの心に接触してあたしを連れ戻したの」
「でもわたしが連れ戻すまで、ロンリは3日間意識不明で危険な状態でした」
「そこらへんの記憶がずっと無くなってたのよね‥でもその理由、こないだ思い出したわ」
「記憶を無くした理由ですか?」
「そう、あたしはアルファと約束したのよ‥アルファの心と融合した時、子供ながらにあたしはアルファの願いを叶えなきゃと思ったの。で、アルファが平和に利用される世界が来るまでアルファの心を、その記憶と一緒に封印するって」
「封印?いったいどこへ‥」
「それは、あたしの中よ!」
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