第34話

国土交通省事故調査室 深夜

一人PCに向かい書類を作成している章生あきお

「‥それでも今回の事故はPDの持つ可能性を否定するものではないと考る。PD-105の出荷を停止させた私が言うのは矛盾していると思われるかもしれないが、桐生森雄きりゅうもりおが最後に開発したラムダOSのみでの動作であればPD-105は安全であると思わる。それを証明する為にもメーカーには開発テストの継続を提案したい。

最後に、現段階で存在を証明出来ていないロボット制御システム『アルファ』について、ある人物より有力な証言を得られたのでここに記す‥」


-回想 国立城杜しろもり大学 ロボット研究所(ラボ)

城杜市を去る日、章生にはどうしても確認しなければならない事があった。

「お邪魔します」

部室に入ってきた章生を久慈護治くじごじが迎えた、

「いらっしゃいませ調査官」

「ゴジくん久しぶり」

章生に同行してきた大本律華おおもとりつかが部室に入って来る。

「これは珍しい、大本女史ではないですか」

「あれ、お知り合いでしたか?」

「私、ここのOGですから。それに元々ラボは桐生博士が開設した講座でしたし、こんなアニメ同好会みたいじゃ無かったですし‥」

「いやあ返す言葉もありません‥ああ、部長&シスターは奥の電算室です」

「すいません、部屋お借りします」

章生が電算室に向かう。

「あの‥ちなみに私も一緒に話を聞くというのは‥」

護治が探るように訊くと、律華が即答した。

「入っちゃ駄目よ、ゴジくん」

「そうですよねー、ごゆっくりどうぞ‥」


電算室

「あー、やっと会えたわ、村主すぐり章生調査官」

章生が部屋に入るなり蓼丸論里ろんりが声を上げた。

「えーと、あなたは‥」

「わたしの双子の妹、ロンリです」

綾可あやかが答える。

「と言う事は、あなたが綾可さんですね」

「はい」

「押し掛けて申し訳ありません、あなたに訊きたい事があって‥」

「事故のシミュレーションをした日の事ですね。わたしも伝えなければならないと思っていました」

「私にも関係がある事だって言われたのだけど?」

律華が訊く。

「関係があると言うよりは、きっとあなたが知りたいと思っていた事だと思ってお呼びしました」


綾可は過去の出来事について静かに話し始めた、

「PDのOSが自動開発システムADSで創られたのは‥」

「知っています。桐生博士が発明したロボット開発プログラムですね」

章生が答えた。

「そのADSはスーパーコンピューター『HAL-0ハルオ』上で稼働していましたが、そのHAL-0を開発したのは共に研究者だったわたし達の父と母なのです。博士と両親は城杜大学の同僚で友人でもありました」

「それでは桐生博士とは面識があったわけですね」

「ただ、その頃のわたし達は幼くて博士に関する記憶はほとんどありませんでした‥あの事故が起こるまでは‥」

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