第18話

城杜しろもり大学 ロボット研究所(ラボ)

「アヤカ、何すんのよ!」

VRゴーグルを外した新谷ろんり(本名、蓼丸論里たでまるろんり)は目の前にいる双子の姉、綾可あやかを睨んでいた。

「もうちょっとで敵を殲滅せんめつ出来たのに、勝手にログアウトさせる事ないじゃない」

「勝手に部室に入って、勝手に他人のPCを使用している人が言うセリフではありませんね」

「ここのPCは無駄にハイスペックだからバトルボッツやるのに丁度いいのよ。あたし一応アイドルだし、ゲーセンとか行きにくいじゃん?」

「それで、わざわざ大学まで来た要件は何ですか。ゲームをやりに来た訳ではないですよね」

「そう、それで待ってたのよ!アヤカ、あの事故について何か知ってるでしょ、隠してもムダだからね」

「別に何も隠すつもりはありませんが、事故調査員の方がここに来た件を言っているなら、事故原因については何も話していませんでしたよ」

「原因よりも関係者の話が聞きたいのよ、って言うか何で聞いてくれなかったのよ!」

「何をそんなに躍起になっているんですか?」

「それは‥」

ろんりは綾可の手を握った。



-慌しく動き回る大人たちを綾可はぼんやりと見ていた。

「意識レベル、低下しています」

「何が起こっているのか、ちゃんと説明してください!」

(叫んでいるのはお母さんだ‥)

「落ち着きなさい」

(なだめているのはお父さん‥)

「現在、娘さんの脳は、完全にコンピュータの一部になっているんです」

「話が違う、テストに危険性はないと言っていたではないですか」

「奇跡が起きたんです、アルファは人間を理解しようとしている」

「そんな事どうでもいいわ、早く何とかしてください!」

「待ってください、これは素晴らしい成果なんですよ。今、人類の夢だった人口知性が誕生しようとしているです」

(今しゃべっているのは誰だっけ‥)

「何を言ってるんですか!論里に何かあったらどうするんです!」

「電源を切りましょう。それしかない!」

「待ってください!アルファはまだ不安定です。安定さえすれば全ては落ち着きます、危険はありません。もし今、電源を切ったら、せっかく完成しつつある量子リンクが崩壊し、人口知性は消滅してしまいます」

するんです!この子の精神がアルファに取り込まれてしまう前に‥」-



「5年前の出来事、あたしにとってはアヤカと共有したこの記憶が全てなのよ。

でもあの事故の時、抜け落ちてる記憶が一瞬よみがえったような気がした‥ねえ、これはあの時の真実を知るチャンスなんだわ!」

「それならば尚更なおさら協力は拒否します。5年前、ロンリは3日間も意識不明になったんですよ。みんなどれだけ心配したか‥もしまた同じ事が起こって、取り返しの付かない事にでもなったら、わたしは‥」

いつも冷静な綾香が珍しく目に涙を浮かべた。

「分かったわよ、アヤカには頼まない、あたし一人で何とかするわ」

「その言い方は卑怯です。そういう言われ方をされたら‥わたしは協力するしかないじゃないですか‥」

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