第17話

荒廃した市街地の中を、戦闘ロボットの一個小隊が周囲を警戒しながら進んでいた。

ここはオンラインゲーム『バトルボッツ』の中、戦闘ミッション遂行中だ。


―2時間前、ハヤセモータース PD開発課 ポートタウン工事現場事務所

「急に休みって言われてもな‥」

冬馬とうまが不服そうに言う。

「しょうがないじゃない、105いちまるごは動かせないし、やる事無いのよ。冬馬もこの機会に有給消化しときなさい‥」

佐伯さえきも不本意そうな口調で言った。


という訳で久しぶりにゲームセンターに来た冬馬は、オンラインゲーム『バトルボッツ』のシートに居た。

『ようチャンプ、久しぶりじゃない』

一人のプレイヤーが通信で妙に馴れ馴れしく話しかけてきた。

「チャンプ?誰の事だ」

『去年のバトルボッツグランプリ優勝者チャンピオン、KTでしょ』

「あんた誰だ?」

『忘れちゃったのかい?グランプリ準優勝のRevレボHだよ』

「ああ、思い出したよ。戦略戦ではナンバーワンだったな」

『あなたには勝てなかったけどね、チャンプ』

「その呼び方はやめてくれないか、というか名前未定にしといたのに良く分かったな」

『機体がいつものカスタムだったからね。僕、チャンプのファンなんだよ』

「ファン‥」

冬馬は絶句した。

『ゲーマーとしてもPDのエースドライバーとしてもね。そういえば、事故の原因は分かったのかい?』

「分からないからこうやってのんびりゲームなんてやってる‥」

『そっか、原因が分かるまでPD-105は動かせないのか』


その時、ビルの陰から小隊の前に頭部が赤く塗られたロボットが現れる。

『テスタロッサだ!』誰かが叫ぶ。

銃を構える隙も与えず、テスタロッサと呼ばれたロボットは手にしたヒートナイフで先頭に立つロボットを切り裂くと、再び物陰へと消え去った。


「速い‥ビームライフルじゃなく、えてヒートナイフで接近戦とは、何者なにものなんだ‥」

冬馬が感嘆かんたんする。

『現在、全国ランキング一位のテスタロッサだよ。ここでチャンプとの対決が見れるなんてラッキーだな』

RevHはうれしそうに言った。


散開さんかいする小隊、

『違う、それじゃ数的優位を保てない』

駄目だめだしするRevH。テスタロッサは1機ずつ確実に仕留めていく。

『ほらー、言わんこっちゃない』

RevHはテスタロッサの行動を先読みして身を隠した。


冬馬の前に立ちはだかるテスタロッサ。

「お手並み拝見かな‥」

ヒートサーベルを構え直す冬馬。

次の瞬間、テスタロッサの姿が消滅した。

『テスタロッサ ガ ログアウト シマシタ 作戦未完了 ノ為 今回ノ戦闘ハ リセット 原状復帰シマス』

メッセージと共に破壊されたロボットが復活する。


「このタイミングでログアウトだと‥」

いぶかしげな冬馬に対してRevHは相変わらず楽し気だった、

『いやあ世紀の対決が見れなくて残念。でも何があったんだろうね』

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