第11話
アサヒテレビ楽屋
アイドルグループ『SSコンプレックス』の
(マスメディアは全滅か‥初日の国交省が事故調査官を派遣したって記事以降、続報無し‥SNSじゃ政府の
あの日、あの瞬間、あたしは何かを思い出したんだ‥でも、それは再び記憶の底へと沈んでしまった。その直後に起こった事故、きっと関係があるはず)
「ハイッ」
メンバーの
「何?」
「抹茶ミルクティー、好きでしょ。ロリリン、さっきからずっと独り言いってるから‥」
「えっ、声出てた?ゴメン、ありがとう‥」
ろんりは慌ててカップを受け取るとみずきに背を向けた。ろんりはみずきが苦手だった、他人と一定の距離を保ってきたろんりに対して、誰とでも自然に親しくなってしまうみずきの存在は受け入れ
(みずきは能力者に違いない、それもあたしとは逆の能力‥)
ろんりには秘密にしている能力があった。それは簡単に言えば相手の嘘を確実に見破る能力、具体的には相手の言葉に含まれる気持ちやイメージ、概念を読み取る能力だ。
これは、一般に『勘が鋭い』とか『感受性が高い』と言われる物の進化形だろうとろんりは考えていた。つまり人間を通信機に例えれば、受信能力が高いと言う事だ。
それとは逆に、送信能力が高い人間もいるだろうというのがろんりの考えだった。『言葉に発信力がある』とか『存在にオーラがある』と言われる人達は、相手に自分の言葉や存在を強く印象付ける能力があって、その能力が強い人間は、他人の考えに干渉する事もあるはずだと思っていた。誰もがみずきを何となく受け入れてしまうのは、その能力が高いからだと‥
(もしかすると、あの胸のざわつきの原因は事故現場にいた能力者の干渉を受けたからかもしれない‥だとしたら、その能力者はみずき以上に強力な力を持っている事になる。しかも、あたしの過去に何か関係があるとしたら‥やっぱり何とかして探し出さなきゃ、こんなもやもやした気持ちのままじゃいられない!)
ハヤセモータース設計開発室
主任の
『大事なモーターショーでトラブルとはとんだ失態だな』
「申し訳ありません、が、事態は収束しつつあります」
『あたりまえだ!これ以上、調査が続いて『裏OS』の存在が明るみに出るような事にでもなってみろ、ハヤセは終わりだぞ』
「あれは極秘サーバー保管されていますので存在を知られる事はありません」
『信じていいんだろうな?前任の
電話を切った黒崎、
「僕が桐生森雄より劣るだと?バカにするな!僕は誰よりも優れているんだ‥誰よりも!」
そう言うと机の書類を乱暴に手で払った。
「極秘サーバーか‥そんなもの存在しないと知ったら社長はどんな顔するかな‥」
黒崎は冷笑を浮かべながら机の上に残ったノートPCを手で撫でた。
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