第12話

ホテルの一室

携帯で調査室長の佐高さこうに電話を掛けている章生あきお

「室長、PD-105の発表会を中止させてください。まだ暴走の原因が分かっていないんですから」

『それは‥できんよ。PDの開発には国税もつぎ込まれている、欠陥があるという確証でもない限り、これ以上、PDの評判を落とすようなまねは許されんのだ。

出張は今日までだったね、早く戻って報告書をまとめてくれたまえ‥』

「今、ここを離れたら確実に証拠を隠蔽いんぺいされます。あと数日延長させてください」

『証拠隠滅?物騒な事を言うもんじゃない、とにかく一旦戻りたまえ』

「室長、経産省から横槍が入ってるんじゃないですか?」

『‥それは君が気にする事じゃない』

佐高が一瞬よどむのを見逃さず食い下がる章生、

「ハヤセモーターはPDにもう一つのOS、非正規のOSを搭載している疑いがあります」

『なに、そんな事をしてハヤセに何の得があるんだ?』

「公道でのAI完全自動運転の実験をする為です。AIコンピュータを成長させるには公道での実践データの蓄積が必須、しかし事故責任の所在が明確でない為、公道では完全自動運転の使用が認められていない。そこで表面上は自動運転レベルを落としたOSを使用し、裏で非正規のOSを使用してデータ収集しようというのがハヤセの目的だと思います」

『大した推理力‥というか想像力だが、証拠は何もないんだろう?発表会と言っても発売はまだ数ヶ月先だ、データを持ち帰って、じっくり腰を据えて調査すればいい』

「そんな悠長な‥今、手を打たなければ暴走する危険を秘めたままのロボットが公道を歩き回る事になるんですよ。それを止められなくて何が国交省ですか!」

『分かった、止めても無駄なようだな‥しかし、やるからには必ず証拠を見つけろ。でなければPD開発を後押ししている経産省に対して、国交省の立場が無くなる』

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