第6話

ハヤセモータース PD開発課 ポートタウン工事現場事務所

章生あきお丹下たんげは開発テストチームを訪ねた。

小久保直哉こくぼなおやさんの容態は‥」

章生の言葉に顔を曇らせるチーム主任の佐伯さえき

「手の骨折と頭の挫傷ざしょうで重傷だそうですが、それよりも、あの日PDー105を緊急停止させた後、意識不明の状態になったままで‥」

「事故のあった日、PD-105に何か普段と違ったことはありませんでしたか?」

「何も問題はありませんでした。もちろん、ドライバーにもです!」


作業車両格納庫

ハンガーにPD-105の試作2号機が置かれていた。その傍らで床に座り込み、それを見上げている冬馬。

丹下と連れ立って来た章生が問いかける。

甲斐冬馬かいとうまさんですね」

「直哉に重症を負わせたのは俺だ‥」

「あなたが止めなければ被害はもっと大きかった、自分を責めてはいけませんよ」

「事実を言っただけさ、あの時はああするしか無かった」

「何か事故の原因で思い当たる事はありませんか?」

「さあな‥でも、これははっきり言える。直哉は正確な操縦をするドライバーだった、ミスは考えられない」

「ファーストドライバーはあなたなんですよね?なぜあの日は小久保さんが搭乗したんですか」

「それは設計開発チームの黒崎に聞いてくれ、奴が決めた事だ」

「開発テストチームのドライバー選びなのに、設計開発チームが決定権を持っているんですか?」

「いや、そんなことはない。が、黒崎は開発本部長と仲がいいからな、無理強むりじいが通っちまうのさ」

「なるほど、参考になりました」

丹下と視線を交わしうなずく章生。

「お邪魔しました、ではまた‥」

立ち去ろうとする章生たちを冬馬が呼び止めた、

「俺はPD-105に誇りを持っている。事故原因を突き止める為なら誰を敵に回しても構わない、覚えておいてくれ」


帰りの車内

丹下は運転しながら助手席の章生に話しかけた。

「単純にドライバーの操作ミス‥では済まなそうですな」

「はい、もしシステムに欠陥があったとしたら、小久保直哉さんは加害者どころか被害者とういう事になる‥」

「さてと、明日はハヤセの工場ですな」

「そうですね、PD設計開発チームの黒崎さんは工場にいるんですよね?」

「ええ、うちの科捜研と協力して調査を実施している筈です」

「昨日の今日で、随分ずいぶん手回しがいいですね」

「良すぎて不気味なくらいですな」

「‥確かに」

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