第5話

城杜市しろもりし、人口110万人、東北の中心都市、世界一の生産台数を誇る自動車メーカー『ハヤセモーターワークス』の工場があり、国立城杜大学は国内有数の研究機関として知られる。

城杜港の再開発地区『ポートタウン』では、国際貿易に対応するためターミナルビル『Sポートタワー』が建設中。 ここでは作業用ロボットが有人無人を含め10機ほど試験運用されている。

このようなインフラが評価され、国のロボット事業モデル地区に指定された。

ロボットモーターショーはこの『ポートタウン』に隣接するイベントホール『ドリーメッセ』で行われていた。


城杜駅

村主章生すぐりあきおが新幹線から駅のホームに降り立つと、初老の男が章生に近寄ってきた。

「国交省調査官の村主さんでは‥」

「ええ、そうですが?」

「良かった。場内放送で呼び出そうかとも思ったんですがね、まずはカンに頼ってみようかと思い直しまして‥」

「あの、どちら様で?」

怪訝そうに尋ねる章生。

「おっと、こりゃ失礼。私は城杜県警警備部の丹下たんげと申しまして、本件を担当させて貰っとります。」

丹下は、丸顔に愛想のいい微笑みを浮かべながら言った。

「これは、わざわざお出迎え頂いて、申し訳ありません。」

「いえ、上から可能な限り協力するように言われてますんで‥食事はお済みですかな、まだなら名物の牛タンでも‥」

「ありがたいお話ですが、とりあえず事故現場を見ておきたいので」


イベントホール『ドリーメッセ』

章生は丹下の運転する車で事故のあったモーターショー会場にやってきた。

モーターショーは中止になってしまった為、会場は撤去作業の真っ最中であった。その中で、事故現場である特設ステージの残骸だけが手付かずで当時の状況を物語っていた。


「事故を起こした機体は科捜研立ち合いのもと、ハヤセの工場で調査中です‥」

丹下は手帳のメモを見ながら言った。

「現場検証は終わっているんですよね、会場にPD-105を狂わせるような要因は無かったんですかね?何らかの電磁波が影響したとか‥」

デジカメで写真を撮りながら章生が聞いた。

「詳しい分析はこれからですが、数多くの電子機器が並ぶ中で特定の装置だけが影響を受けるような電磁波が出ていた可能性は低いだろう、というのが科捜研の所見でしたな。特にPD-105は強力な電磁シールドが装備されているそうで‥」

科学に疎い丹下はひたすら手帳のメモを読み上げた。

「なるほど‥現場の雰囲気は大体分かりました」

章生はホールを見回しながら言った。

「この後はどうされますかな」

「もう少し付き合って頂けるならPD開発テストチームの人達に話を聞きたいんですが‥」

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