第2話

ハヤセモータース PD開発課 ポートタウン工事現場事務所

人間搭乗型二足歩行ロボットPDー105が明日に迫ったロボットモーターショーに向け、最終調整の真っ最中だった。


冬馬は司令室に戻って来るなりチーフの佐伯さえきに抗議した、

「反則だぞ、まだ5分経ってなかっただろ。」

「約5分って言ったでしょ!現実はそんなに正確に進まないわよ、大体、マニュアルモードにしなけりゃ障害物は自動回避してタイムロスを減らせたんじゃない」

「それは‥急いでるんだマニュアルモードにするだろ、普通」

「しないわよ、あんな使いにくいモードを好んで使うのは冬馬ぐらいなもんよ」

「何かノーマルモードは自動制御が強すぎてなじめないんだよ‥で、スコアーは?」

「258点、記録更新よ」

佐伯は呆れた調子で答えた。

「ほら見ろ、マニュアルモード使った方が高得点だろ」

「くそー、5点差か‥今日こそは勝ったと思ったのにな」

もうひとりのテストドライバー小久保直哉こくぼなおやが悔しそうに言った。

「俺と5点差まできたか、成長したな直哉」

冬馬は直哉に向かってサムアップした。

「カッコつけてる場合じゃないわよ冬馬!ノーマルモード限定なら直チンの方が成績いいんだから。マニュアルモードの方が成績がいいあんたが異常すぎるって分かってる?」

その時、ドアを開けて設計開発チーム主任の黒崎迅くろさきじんが入って来る、更にバタンと意識的に大きな音を立ててドアを閉めると開発テストチームを一瞥いちべつして言った、

「予定変更!明日のモーターショー、ドライバーは小久保直哉で行くぞ」

「明日はファーストドライバーの冬馬の出番て決まってたでしょ、越権行為えっけんこういよ黒崎」

佐伯がとがめるように声を上げる。

「甲斐冬馬、また勝手にマニュアルモードを使っただろ!言ったはずだ、モーターショーでアピールしたいのは自動制御のノーマルモードなんだ、お前がマニュアルモードでうまく使えてもしょうがないんだよ」

黒崎は冷たく言い放った。

「直哉、行けるか?」

冬馬は黒崎を睨みつけたまま言った。

「オレはいつでもOKっす」

「そうか、ならそれでいい、俺は構わないさ」

そう言って指令室を出て行く冬馬を佐伯は心配そうに見送った。

「冬馬‥」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る