第8話 喫茶店
時の鏡坂真一文字は、内木田光ちゃんが亡くなっていると冷たく言い放った。
「何でそう思うのですか?」
「.....ふむ、そんなに驚かないのですね。」
「.....。」
「なんとなく勘づいていたんですね。」
「いやっ、まさか死んでるなんて思いませんし...、それは今もそうです!だけど...。」
「...そうでした、そうでした!目が見えないことで他の感覚が鋭いのですね!...なるほど、なるほど!分かりました!」
するとそこへ注文した絶品カレーが運ばれてきた。
「まずは食べましょう!絶品ですよ!」
それから20分ほど無言でカレーを食べ続けた。
先に時の鏡坂探偵が食べ終わり、それから10分後に宇宙人の速人くんもミートパスタを食べ終えた。
私が食べ終わったときには、時の鏡坂探偵は食後のコーヒーを啜っていた。
「んっんー!どうです?絶品でしょ?ここのカレーは!」
「...えぇ、まさかカレーの中にハンバーグと唐揚げとフライドポテトが入ってるとは思いませんでした...。」
「満足感で満たされるでしょう!色彩陽菜乃さんも食べ盛りの年齢だから、この満足感満載の絶品カレーをぜひ食べてもらいたくてね!」
満足感満載というか、満腹感満載の背徳感万歳って感じだ。この量はどう考えても高校野球部の男子高校生が食べる量だよ。...よく20分で食べた私!ーー時の鏡坂探偵は5分で食べ終わったみたいだったが...。
一息ついて、私もコーヒーを注文した。
時の鏡坂探偵はトイレのために席をはずし、5分ほどで戻ってきた。
「さてと!色彩陽菜乃さんがコーヒーを飲み終わったら失礼しょうか!ーー色彩陽菜乃さんの絶品カレーとコーヒー代も、もう払い終えたから料金は心配しなくていいですよ!」
「えっ!...ありがとうごさいます..。...じゃなくて!話しは終わりですか!?」
「...あぁ、光ちゃんのことだったね!...よく考えたらこんな食事の席でする話しでは無いと思ってね!また後日にしょう!」
食事の席では出来ない話しなのかーーそれとも他に理由があるのか。...いや、たしかに人が亡くなっているかもしれないのだ。普通、人に話すときには気を遣う。私が死に対して慣れてしまったのだろうか。そう思うとちょっと悲しい。
「色彩陽菜乃さんは感覚が鋭いから何か気づくこともあるかもしれないね!」
たしかに、黒百くんはまた明日も研究所に来る。そのときに何か探れることもあるかも。
「時の鏡坂探偵!私のことは陽菜乃でいいですよ!」
「そうですか!じゃあ、陽菜乃!私のこともホームズと呼んでいいですよ!」
「いやー、...ホームズ?」
「そう、ホームズ!かの有名なシャーロックホームズです!」
ん~~~、どうしょう。呼びたくないな~...。むしろ敵キャラのモリアーティの方が似合いますよ!ーーとは言えないかぁ~...。
「所長は、たまにトキとかイチって呼ばれているよ。」
宇宙人の速人くんが言った。心中を察して私に助け船を出してくれたのだろうか。ーートキとかイチって、どっちも時代劇に出てきそうな名前だな。
「まぁーそれでもいいだろう!ただ、呼びたくなったらいつでもホームズと呼んでもいいですからね!」
呼びたくね~。
「それと!くれぐれも深入りしないように!んっんー!」
それから、トキさんと宇宙人速人くんとは喫茶店で別れた。
家まで送ってくれると言ってくれたけど、トキさんの情報収集力(ストーカー気質)はバッチリなようだ。私はここの喫茶店が気に入った。しばらくゆっくりしていこう。
外では雨が降っている。時々、お客さんの出入りの度に、ドアから雨の音と匂いが入ってくる。
雨の音と匂いが、不安や緊張の色を洗い流すように、いつまでも降り続けていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます