第2話 色とりどり愉快な仲間たち
私の名前は色彩陽菜乃(しきさいひなの)。
ある日、交通事故が原因で目が見えなくなってしまった。しかし、その事故がきっかけで色共感能力を会得した私は味や匂いを色として認識できるようになった!
「見た目は子供、頭脳は大 」 ドゴッ!
「痛って!」
「あんた玄関の前で突っ立って何ぶつぶついってんの」
そこには同じ〈未来科学研究所〉という如何にもな名前で、怪しげな、一周回って普通な名前の研究所で働いている同僚の明来日桜(あくるひさくら)がいた。
とゆうかこき使われてるだけだけどな、とツッコミをいれつつ睨み付けてくる(多分)。いや、桜はいつもこんな感じだ。この世の全てを恨んでいるかのようなこの目つき(見えないけど)。になで肩で腕をダラーンとさせている無気力人間(のように思える)。身長は180を越えているので小さな子供は見下ろされただけで泣いてしまうだろう(これは実際に子供の泣き声を聞いた)。
「いきなりぶたなくてもいいじゃん!痛ったいな~」
「あんたがいつまで経っても家から出てこないからでしょうが」
名前的に、明日には桜の花のように咲き誇る素敵な日がきっとやって来るさ!みたいな名前して。 ドカッ!
「痛った!声に出してないじゃん!」
「顔で分かる」
「も~、せっかく自己紹介してたのに‥。」
「自己紹介?いつまでも変なこと言ってないで早く行くよ。ほらもうこんな時間。」と左腕につけている腕時計をこっちに近づける。
私が見えないことを知っていてやっている。
桜はニヤリ、としているだろう。
「ニヤリ。さっきのお返しです。時間は9時23分。急ぎましょう。」
桜が私の手を繋ぎ、足元の水溜まりを避けて歩き出す。
「お返し?私がやられてばっかりなんだけど!」
「心の中で目つきのことと身長のことを言ったでしょうよ。」
「......お前はネテロ会長か!」
〈未来科学研究所〉に着いた時にはいつものメンバーが忙しなく動いていた。ゴキブリのように。
「ゴキブリってちょっとひどくないですか!?」
メガネをかけてマッシュルームカットの男は研究所1の博識。(自称かな~)楠木緑夢(くすのきぐりむ)
「ちょ~無理無理!ゴキブリ!?ゴキブリ出たの!?」
学校の制服を着ていて髪を巻いて、スマホをいじっている様はいかにも今風な女の子。というか、ギャル。(ギャルってもう死語?)萌黄色陽香(もえぎいろはるか)
「たしかに~。この状況と合ってるかもね~逆に~」
アフロヘヤーの男はチョコをボリボリ食べて素足で体育座りの姿勢をしてキャスター付きの椅子の上でくるくる回っている。(L?)森亜藍(もりあらん)
「お~い。お前ら遅せーぞ。早く片してな。」
ここの研究所を管理している責任者。赤星惺哉(あかぼしせいや)。私の両親とは古くからの付き合いで大学時代の同級生だった。両親いわくここまで研究熱心で体の中に熱いエネルギーを宿している人物は他にはいない、と言っていたけど...。
今はその姿は見る影も無い。無気力加減は桜以上だ。
「私は人からそう見られるだけですよ」
と横にいる桜が言った。
「あと今あいつエロ本見てるぞ」
だそうだ。
ここは怪獣の生態を研究する施設。といってもここは弱小中の弱小。弱を少々足したくらいでは評価しきれない破滅寸前の研究所。国からの予算は中々出されず研究員は数名。今紹介した赤星局長を除くメンバーも特別、専門知識があるわけではない。時々、緑夢が研究員メンバーに加わる程度で、他は日々、運ばれてくる怪獣の死体の処理に悪戦苦闘している。云わば、〈未来科学研究所〉とは名ばかりで、怪獣処理場の方がしっくりくる。
赤星局長と研究員以外の人は、皆、10代の子供だ。そして、親がいない。突然、親を亡くし、突然、社会に放り出されてしまった子供たち。私も、両親の知り合いの警察官にここを紹介されてやって来た。
目の前には巨大な怪獣が横たわっている。鼻を突くような酸っぱい臭い。青いどろどろとした液体が傷口から溢れ出て、ウジ虫が集まっている。(隣の桜からの報告)
「さぁ~皆頑張ってー。ちゃっちゃっと終わらせよー」
「はーい」という色とりどりな返事が響く。
今日も私の1日が始まる。
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