フルーツポンチ
今日の給食は大好きなフルーツポンチだ。ももやオレンジ、パイナップルなど、いろいろなフルーツがあまーい液体にゆらゆらとゆれている。まるで私を食べてとさそっているようだ。私はスプーンでかの女たちをすくって、口に運ぶ。あまさが口いっぱいに広がって、私は笑みをうかべる。今度は食パンだ。私は食パンをちぎって、それをあまい液体の中に入れてひたす。しみしみになったパンを口に入れると、パンのあまさと液体のあまさが手を取り合って最高の味になるのだ。
「うげっ」
満面の笑みで食パンをちぎっていると、となりから声がした。まゆを寄せて、いやそうな顔をしているのはさとうくん。何がいやなんだろう。私は不思議そうな顔でさとうくんを見た。
「お前、何でフルーツポンチにパンなんか入れるんだよ」
「え?美味しいからだよ」
「はあ?頭おかしいんじゃねーの?」
「そ、そんなことないよ」
そんなにおかしいかなあ。私はとたんに不安になる。するとさとうくんはパッと何かひらめいた顔をした。
「決めた!お前今日からあだ名はフルーツポンチな!」
「へ?」
「やーい!フルーツポンチがフルーツポンチ食べてる!」
わけが分からない。そばにいた男子はつられて笑い、女子は男子がまた何かしているよ、といったあきれた顔をしている。
さとうくんは給食の間、ずっと私をからかっていた。私はしだいに腹の底がむかむかとしてきた。大好きなフルーツポンチも美味しくなくなってきて、私は食べるのを止めてしまった。次にフルーツポンチが出るのはいつか分からないのに。最悪だ。
私の食べ方、変なのかな。でも、みんなも私がしない食べ方をしてるし、私もみんなと変わらないと思うんだけどなあ。だって、後ろの席の山田くんはカレーライスのおかずにさし身を食べるって言うし、前の席のすずきさんはサラダにミカンを入れるって言うし、友達のわたなべくんは人間を食べるって言ってたよ。
Fin.
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます