夢の話


 学生の私は、一人の男の子と共に自習をしていた。教科は国語。『怖いものは何か』という問いに必死に頭をひねる。怖いもの。怖いものって、何だろう。漠然としすぎていてよく分からない。男の子と二人で考えていると、そこに先生がやって来た。


「進んでるかい?」


 先生の問いに私は顔を曇らせる。


「それが……全然分からないんです。『怖いもの』って一体何なんですか?」

「怖いもの、か……。一つ、忘れないで欲しいものがある」


 先生はそう言って、白いチョークを手に取り黒板に文字を書き込んだ。『ケルカス』と達筆な字で書かれたそれに、見覚えはない。続いて先生は絵を描いた。曰く、『ケルカス』の姿だと言う。大きく描かれた球根の真ん中にはギョロリとした目が生えている。なんとも不気味な絵だった。


「この『ケルカス』はな、深い土の中に埋まっているんだ。これが土をかき分け太陽の光を受けた時、此奴は知的生命体となる。俺達人間なんか馬鹿にするくらい、脳が発達しているらしい。こんな奴らが土から出てきたら人間はおしまいだ」


 先生はそう言って教室を出て行った。『ケルカス』……聞いたことのない言葉だ。私は息抜きに窓を開けて外を見た。目の前のグラウンドからミシミシ、と音が聞こえた。


Fin.

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