09話 今後の課題
「あれは凄いな!あんなのも居るんだな」
「あれはカブトと呼ばれる魔物です。もう片方はジャイアントバードですね」
ドランが補足してくれる。なかなかに博識である。
目の前の光景は体長50センチほどの巨大なカブトムシの様な魔物と2メートル程の鳥が戦っている。戦っていると言うよりは鳥がカブトを餌にしようとしているが正しいかもしれない。
俺はカブトムシが好きで昔はよく捕まえに行った。何となく助けてあげるか、と思い2匹に近づく。
後ろではドランが何か一人言をブツブツ言っている。色が〜とか言ってるが気にせず鳥を追い払い助ける。
目の前には黄金色に輝くカブトがいる。傷はあるがこのくらいなら大丈夫だろう。するとカノンが話しかけてくる。
「主人様!さっきドランも言ってたけど、普通のカブトと少し違う気がする」
普通のカブトは30センチ程で黒色に近いみたいだ。まあ前世のカブトをでかくした感じだな。
カブトはすぐに逃げていくと思っていたがその場に留まり続けている。
「こいつ逃げないな。よし眷属化!!」
ノリで眷属化してみたが何も起きなかった。そりゃそうだよね。
何となく眷属に出来たら普段は人型で戦いの時は仮面ライダーのようになるカッコいい奴になると思ったんだがダメだったみたいだ。
「さすがにカブトは眷属化出来ないみたいだ」
みんなは笑っている。少し恥ずかしくなったが気にしない。こっちの世界に来てから大分ポジティブになった。異世界デビューというやつかな!
くだらない事を考えつつカブトと別れ、先に進む。
そこからは特に何も起きることは無く村に戻ってきた。
村に戻りみんなを集めて、これまでの事を全て話す。
ドランについての事を説明するのに苦労をしたが、みんな操られていた事を知っていたので何とかなった。ドランは頭を下げて謝っていた。
みんなに紹介も終わったので今後どうするか相談する事にした。
まずは食事関係だが人狐族たちに禁書辞典で得た前世の知識を余す事なく教える事にした。知識があっても物がないと料理は作れないので人狼族に狩や採取を任せることになった。調味料は今後の課題だ。今は海から取ってきた塩を使うしか無いだろう。
衣服も制作を考えないといけないがこれは大した問題ではなかった。
人狐族は魔物の毛や糸から衣服を作るのが得意らしい。
後から知ったのだが種族によっては魔力を変換し、服にできる種族もいるみたいだ。擬人化とセットみたいなものなのかな。
これで衣食住の内、衣食の問題が解決した事になる。
解決と言ってもまだまだ改良の余地はあるのだが今の状況で贅沢は言えないだろう。
そんな事よりも重要な問題がある。
ここにいる種族は料理や狩は得意でも村を発展させるのに必要な建築知識がほとんど無いのだ。
俺が教えれば確かに知識は得られるだろう。しかし肝心な人手が足りない。何が言いたいかと言うと圧倒的に力仕事を任せられる人材が居ないのだ。
「服や食は何とかなるとしてだ。家を建てたりする人材が居ないと町は作れないな。何かいい方法はないだろうか?」
前世なら土地を買って業者に任せれば家ができた。それか既に出来ている家を買えばよかった。
しかし今現在はそれが通用しない。もう少し村が発展し、町程の大きさになれば家を建てる仕事を専門に扱う職業などが出来るだろう。
みんなは俺の言いたい事がわかった様だ。何かいい方法がないかと考えてくれている。
そしてシズネがその答えを教えてくれた。
「それでは人手を集めればよろしいのではありませんか?」
やっぱりそれしかないか。今のままでは国どころか町を作るのも不可能だ。
「そうだな!既に南には行ったから北に行こうか?」
確か北には強力な魔物や亜人が居るそうだが今のメンバーなら遅れは取らないだろう。
「それも考えましたが東に向かうのが宜しいかと思われます。東には猪人族と呼ばれる種族がおります。土を操る能力に長けていて、性格も見た目の割には温厚と聞いております」
なるほど猪人族か。イメージは向こうの世界のオークみたいなものかな?ただし向こうの世界のオークみたいな見た目ではなく人型をしていて性格も温厚らしい。
かなりその種族が気になるので、まずは会いに行くことにする。
人数も増えて全員で行く必要が無いので何人かは村に残ってもらう事にした。
東に行くメンバーは俺とシズネとドランだ。
まずはシズネだが提案者なので同行を頼んだ。次にドランだが何かあった時にすぐに逃げられる様に一応連れていく事にした。
人数を少なくしたのはあまり大人数で向かって警戒されても嫌だったからだ。何かあっても今の力なら何とかなるという自信もある。
置いて行かれる3人は納得していないが何かあった時に村を守る者も必要なのだ。
特にカノンには村に残り皆を支えて欲しかった。
レイカとリヴィアに関しては、ここ最近でかなり疲労が溜まっている気がするので置いていく。
シズネとドランも疲れはあると思うが、この問題を解決しない事には先に進めないのだ。
申し訳ないが付き合ってもらう事にする。
二人は全く問題ないと言っていて、何故か嬉しいとも言われた。
この世界に来て俺は恵まれているなと感じる。前世では仲間と呼べる存在も居なかった。
何となく生きていたが今は目的を持って生きる事が出来ている。その事がとても嬉しくなり自然に笑みが溢れる。
「それじゃあ二人とも行こうか!」
そう声を掛け村から出発する。
今回に関してもこの辺りの情報を集めたかったのもあり歩いて向かうことにする。それでも身体強化を使用しながら移動しているので前世のような速度感ではないのだが。
かれこれ4時間ほど進むと目の前に鉱山が現れる。
この世界の鉱山では銅や銀や金に加え魔石と呼ばれる特殊な鉱石も取れるらしい。
長い年月をかけて魔力が結晶化した物みたいだ。
魔石には他の鉱石にはない特殊な力がある。それは付与を得意とした者がイメージをして魔力を込めるとそのイメージを魔石が覚えるというものだ。
どういう事かというと、魔石に水をイメージし付与をする。そうする事で水を出すことが出来ない者も魔石に魔力を流すだけで同じように水を出すことができるようになるということだ。
この世界は魔力で満ちているためスキルを持たない一般人でも例外なく魔力は持っているのだ。
途轍もない代物に感じるが魔石にも弱点がある。
それはあまり数が取れないことだ。鉱山でもかなりの深部でしか取れないらしい。鉱山でなくとも地面を掘っていると取れることはあるみたいだが、かなり稀のことみたいだ。それも使用限界もある。大きいものほど長く使えるって事だな。
一般人が使う機会はあまりなさそうだ。価値も金の10倍はあるらしい。
そこで俺は我に帰る。魔石を使用する事が出来れば国を作る際(さい)かなり有利になる。よくよく考えてみればこの魔森林は人族の手が伸びていない宝の宝庫なんじゃなかろうか?
目の前には大きな鉱山がある。ここは駄目元で試してみよう。
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今日気づいたのですが有名なドリームライフという小説がある様ですのでタイトルを変更させて頂くかも知れません。
よろしくお願い致します。
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