04話 初めての亜人
「これは一体何が・・・」
恐怖というよりはなぜ暴れまわっているのか、何に攻撃しているのかが疑問だった。
「アデル様、竜の首に何かついてます」
レイカが何かに気づき教えてくれた。
「黒い首輪?でもなんで?」
「もしかするとですが人族国家の中には魔物を操る魔道具があると昔父に聞いたことがあります、しかし竜を操るとなると・・・」
レイカが言い淀んでいる理由はわかった。
まず竜とはこの世界でも最高位の魔物らしい。
知能も高く力もある、人族と亜人どちらにとっても脅威なのだ。
それを魔道具で操ることが出来るとは到底思えないらしい。
「完全に操れてないのだろうな、だから無差別に攻撃していると思う。しかしそれを本当に人族が行なっているなら脅威だな」
竜を操るのは完全に出来なくてもそれ以下の魔物なら操れるなら脅威だ。
俺は人族国家の脅威度を上げた、それと同時に激しい怒りが湧いてきた。
俺が怒っているのが分かったのだろう、レイカが緊張しながら聞いてきた。
「あっアデル様どうされますか?」
魔力がかなり漏れていたみたいだ。気をつけないとなと心の中で思い答えるのだった。
「もちろん、あの首輪を壊そう」
レイカも俺と同じ事を思っていたのかすぐに了承して2人で駆け出した。
竜が暴れている近くまで来ると小さな村があった。
村を進み竜の近くに向かうと・・・
「なんだこれは・・・」
木で出来た住居はほとんどが壊されている。
そんな事よりも道の至る所に、見た目は人とほとんど変わらないが獣耳が生えている者たちが倒れていた。しかも所々特徴も違う、見る限り狼と狐の様な感じだ。
色んな所に血が飛び散り、見るも無惨な姿の者もいる。生きてる者も数多く居るが声を掛ける余裕は無い。
まだ竜は居るのだ。俺はレイカに指示を出し俺は竜と対峙する。
「レイカ!生き残っている者を連れて逃げろ」
レイカは何かに言いたげだったが素直に動ける者や怪我人を連れて逃げてくれた。レイカに連れられて亜人と思われる人たちが離れていく。素直に逃げてくれて良かった。
「これでよし。後はあの首輪を壊すだけだ」
俺は竜の近くまで行き剣を構える。普通なら勝てないと思い逃げ出す自信があるが、今は全く負ける気がしない。
「グギャァァァ」
10メートルを超える巨体が咆哮をあげる。
獲物を逃されて怒っているのか、首輪に抗おうとしているのかは分からないが、かなりご立腹の様だ。
剣を取り出し構えていると、真っ黒な体躯が俺に向かって突っ込んでくる。
凄い迫力だが身体強化を使い冷静に右に交わし、交わし
操られているせいか直線的な攻撃だったので対処は簡単だった。
パキンと音立てて首輪が竜から外れて地面に落ちる。
かなりの脅威の筈なのに全く脅威に感じなかった。
「この力も大分扱い慣れてきたみたいだな」
この体と力を貰ってまだそれほど時間は経ってないのだが、なぜか何十年も使っている様な感覚を覚える。
そういえばレイカも歩きながら言っていたな、進化してから力を得たのに、すぐに使い方が分かるって・・・不思議だな。
首輪が壊れたのを確認し、竜を見るとなんだか威圧の様なものが消えている気がした。
「グオ?フアー」
竜は何が起こったのか分からない様子だったが少し経つとこの場から去って行った。首輪を破壊しても襲って来たのなら殺める事も考えたが去って行った事を考えると操られていたのは間違いなさそうだ。
割れた首輪を見ながら考え込んでいるとレイカがこちらに向かって走って来た。
「アデル様、お怪我はございませんか?」
レイカに心配されたので怪我一つない事を伝える。
レイカの後ろから亜人であろう人たちもこちらに向かってくる。
70人くらいだろうか?竜が現れるまでは100人くらいの反応があった筈だ。この少しの時間で30人近く犠牲になった事を意味していたのだ。
かなり複雑な気持ちになっていたら亜人の先頭を歩く二人の女性から俺に声をかけてきた。
『私は人狼族の族長カノンという、助けてもらって感謝する人族よ』
少し気が強そうな口調で話かけてきたのは、見た目は18歳くらいのスレンダーな銀髪の女性だ。
やはり目に付くのは長い銀髪の上にある狼耳だ。
言葉に棘があるのはやはり俺とレイカが人族だからだろうか?
何を言おうか考えていると続けて声をかけられた。
『助けて頂き感謝致しますわ。
そう声を掛けてきたのは落ち着きがある22歳程の女性で派手な着物の様な服を着ている、見るからに妖艶という言葉が似合う。
黄金色の髪を結んでいるが、その上には狐耳がある。
二人共凄く若そうで向こうの世界なら女子高生と大学生みたいだが種族の長と考えるともう少し上なのかもしれない。
それに二人共、魔力はかなり高い。族長は強い者がなるのかもしれないな。
それでも竜と比べれば赤子同然だが。
「気にしていないよ。俺はアデル、こっちはレイカだ。見ての通り人族だ。カノンさんとシズネさんだな、よろしく」
その後二人に命の恩人なんだから呼び捨てで構わないと告げられた。
その後は俺達がここに来た理由を二人に話した。
そこで聞く二人にも何があったのか聞く事にした。
話をしてくれるみたいだが、人狐族、人狼族どちらの顔も皆暗い。
まず人狐族と人狼族は同盟関係にあるらしく仲はいいみたいだ。村同士も近く交流も盛んらしい。
ただ1週間前に事件は起きた、人狐族の住む村に竜が現われたらしいのだ。
無差別に暴れる竜に奇襲された形になりかなりの人数が犠牲になったらしい。
そして竜は人狐族を襲った後すぐに近くの人狼族の村も襲ったのだそうだ。
そのあとは生き残った人狐族と人狼族が合流しここに集まっていたらしい。
集まった先でまた襲われているのを見た俺達が助けたと言うわけだ。
『竜が村を襲う事なんか今まで一度もなかったんだ、暴れている竜を見てすぐに人族が首輪で操っているのが分かった!でもどうする事も出来なかった、私にもっと力があれば・・・』
『そうですわね。私達にもっと力があれば同胞を死なせずにすみましたのに・・・・』
二人は自分たちの力の無さを嘆いている、その顔には悲壮感も漂っている。
こんな事を普通にする人族国家に本当に腹が立った。
同胞の無念を晴らすため人族に復讐したくても敵の正体もわからないし、国家を数十人で相手できる筈もない。このまま逃げ隠れするしかないと二人は言う。
悔しいが残った者で村を再建するらしい。
なるほどな。何か“力”になってあげたいが・・・
そこでレイカがおもむろに口を開いた。
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