02話 最初の仲間


俺は汚れた服を綺麗にする為のスキルを作る。


“清浄”だ。このスキルを使った瞬間、衣服や髪まで綺麗になった。


そこから少し考えてみたが、思考判断が物凄く早くなった。早くなっただけではなく冷静に判断も出来る様になった。きっとスキルのおかげなんだろうな。

俺が柄にもなく冷静に考えていると女の子が話しかけてきた。


「あの、あの助けてくれてありがとうございます」


女の子にお礼を言われた事なんて数少ないのでかなり動揺した。いや〜やっぱり助けてよかったな。

なんて考えながら視線を女の子に向けると、かなり危うい格好をしていた。慌てて服を着る様に言うと女の子もかなり恥ずかしそうに服を整えて出した。


「あの本当にありがとうございました。あなた様が助けてくれなかったらどうなっていたか・・・」


泣き出しそうな顔でお礼をまた言われた。

この子も両親を殺されて辛いはずだ。それでもしっかりこの現実と向き合っている、強い子だ。


「いや、気にしないでくれ!通りかかって気がついたら行動していただけだから」


そうは言ったがこんな可愛い子が目の前で襲われているのを見て見ぬ振りは出来なかった。美少女だから助けた訳ではないが多少の下心があったのも否定は出来ない。男諸君ならこの意味は分かってくれる筈だ。



「そういうわけには・・・あっ私はレイカと言います。お名前を教えてくださいませんか?」


レイカさんって言うのか。いい名前だな。

俺の名前か。えーと確か・・・


「アデルだ!それなら俺はここら辺に初めて来て分からない事だらけだから簡単な事でいいので教えてほしい」 


「アデル様ですか・・・・」


少しボーっとしていたがレイカさんは、「任せてください」といい笑顔になった。

場所を離れる前に盗賊みたいな奴らをどうすればいいかレイカさんに聞いたが近くに町もない為このまま放置するしか無いとの事だった。

そのまま洞窟を離れ草原の岩場で話をした。


レイカさんは19歳らしい。この世界の成人は16歳との事だった。

それからも色々話をした。遠い村から家族と町に行こうとしていた所を襲われたらしい。


この世界では良くある事らしく、命が助かっただけで運が良かったのだとか。護衛は?と確認すると、護衛を頼めるのは貴族や商人や金を持ってる人らしい。

一般人クラスでは皆リスクを承知で移動するらしい。


「それよりレイカは今後どうするんだ?」


俺はレイカに今後どうするかを聞いた。助けた訳だしそのままにしとけなかった。

あとレイカさんと呼んでいたら呼び捨てでと言われたのでそうしたのだ。



「村に戻っても居場所はないですし・・・正直行く宛もありません。何でもしますのでアデル様に同行させて貰えないでしょうか?」

なにー!!!こんな美少女と一緒なら願ってもない事だけど俺と一緒で嫌じゃないのか?  


「それは構わないんだけど俺と一緒でいいのか?嫌じゃないのか?」


正直嬉しいがこの後は人族以外の仲間を集める為にも魔森林に入ろうとしていたのでレイカがついて来れるか不安もあった。


「はい!嫌じゃないです!むしろどこまでも御同行します。そして御恩を返させてください!」


そこまで言ってくれるなら大丈夫か。

俺はレイカにありのままの事を話した。今日この世界に転生され、仲間を集める為にも魔森林に入る事も。


最初はびっくりしていたレイカだったが何事もなかったかの様に信じてくれた。今の説明で信じてくれるんだな。正直嘘だと思われると思っていたが・・


「とりあえず何か食べるか?盗賊が持っていた食料があったからな」


レイカに勧めたがまだ食べる気がしないと断られた。

俺もまだ腹は減ってないから食べなくてもいいやと思った時ふと気になった。

禁書辞典に神王について確認したところ、俺の体の生命エネルギーは空気中にある魔力によって補っている為、食事も水も必要ないらしい。やっぱりか!寿命が無いとか言ってたし。


しかし味覚はあるので食べる事はできるらしく、純粋に食事を楽しむだけみたいだ。なんて凄い身体なんだ。



「レイカ。今調べたんだが俺の体は食事を必要としないらしい。種族も神王という物みたいだ。」


これにはレイカも目を見開き驚いている。

神・・・と言って絶句している。

少し経つと話し始めた。


「神王ですか?聞いたことはないですが、神人というのが人族の最高位と呼ばれていますよ。今まで誰一人そこに到達した者は居ないとの事なので噂程度にしか認知されていません。聖人になれれば人族の最高位と言われるみたいです!もしかしたらアデル様は神人かもしれませんね」


よかった。引かれると思ったからな!

ほっとしていたらレイカが落ち込み出した。


「でもそれだと私が足を引っ張ってしまいますね。私にもっと力が有ればこんな事にもならなかったのに・・・」


レイカは普通の人族でスキルなどは無いみたいだ。

力が無いことが悔しいみたいだけどこんな可愛い子が力を求める事がそもそも間違っている様に感じてしまう。


しかし魔森林の中に入るからにはレイカもそれなりに戦えた方がいいのか。何かいい方法はないかなと思っていると、ふと思い出す。自分の伝説創造というスキルのことを。これを上手く使えばレイカを強くできるのではなかろうか?


ただ出来たとしてもそれが正解なのかわからない。

ここは本人に聞くしかないな。


「なあレイカ。俺のスキルを使えば強くなれる可能性があるんだがどうする?正直女の子が強さを求めるのは・・・」


途中まで話しているとすぐにレイカが話に入ってきた。どうやら最初から覚悟ができていたらしい。


「アデル様の役に立てるなら何だってします。むしろ力を与えてくださるのに断る理由なんてありません。こちらからお願いしたいです!」


「わかった!」


俺は禁書辞書に答えを求めた。レイカを強くする方法を。その答えが従属化とスキル付与らしい。


どういう事かと言うと眷属化をすると俺に敵対する事も出来なくなるが、そのかわり俺の眷属になって種族が進化する可能性があるらしい。俺の眷属に相応しい種族になるんだとか。まあその人の才能もあるんだと。

全くどこの魔王だよ!


もう一つはスキル付与らしい。これは俺が作った世界系以下のスキルを眷属に付与する事ができるらしい。

よく分からないが何とかなるだろう。

レイカに確認したが問題ないとの事なのでまずは眷属化から始める事にする。


「それじゃあレイカ。始めるよ!眷属化!」


俺がそう言うとレイカが光出した! 

これ大丈夫か?と思ったが光は少ししたら収まる。


そこにはレイカが居るのだが、なんだか前より綺麗になっている気がする。確認すると種族が上がるにつれて魔力量も上がる為、見た目も少し変わるのだとか。


レイカに特に異常はないか確認したが問題ないとの事。むしろ今なら何でも出来そうだと言って喜んでいる。いいね。美少女の笑顔!


「じゃあ次はスキルを付与するよ、スキル付与!」


スキルはすでに出来ていて俺は言うだけでよかった。

色々ぶっ飛んでる気がしたがいちいち気にしていたらキリがないので諦める。

レイカは前と比べて格段に強くなった気がする。


「レイカの状況を確認する為のスキルを作成しないとな」

そう嘆くと簡単にスキルを作れた。


スキル“天眼” 他人のステータスを見れる能力。

天眼を使いレイカを見ると、そこには信じられないものが沢山あった。


いかん!これはダメなやつじゃないか?てかどう考えてもやりすぎだろ?人族の最高位が聖人って言ってたよな?


レイカにも伝えたが、口を押さえて、ただボーっとしている。


名前  レイカ

種族  神人

影響値 1530万

属性  アデルの眷属

スキル 世界系 閃光世界

身体強化、空間収納、思考加速、自動治癒、魔力衣、鑑定、魔力感知、飛行術、光系統全ての魔法を応用可能。


因みに確認した人族の影響値はこんな感じだ。


人   1万~10万

超人  10万~50万

仙人  50万~300万

聖人  300万~1000万

神人  1000万~


レイカが今日で人族の最強を超えてしまった。

そもそもこの数字は禁書辞典が出した数字であり、今の人族の最高が聖人である事からそれ以上は測れない可能性すらある。


しかも神人も食事を必要としないらしい。この世界では進化して、高位になればなるほど寿命も延びるみたいだ。神性になると寿命は無くなるらしいな。

ただ不死身とは違い、肉体が消滅すれば死ぬ事はあるらしい。


「えーとレイカ。これは・・・」


俺がやりすぎてないか心配してるとレイカが口を開く。


「ありがとうございます!これでアデル様のお役に立てると思います。頑張ります!」


ポジティブだ!まあ見方を変えれば頼れる仲間が出来たのだ。俺が異世界で求めていたものの第一歩だろう。

レイカはスキルを楽しそうに確認していた。

既にかなり力に慣れたみたいで使いこなしている。


やはり才能があったのかもしれないな。じゃないと神人はおかしい。

とりあえずスキルの確認も終わったし、魔森林について確認する。なになに?なるほどね。


意思を持たない強力な魔物や人族との争いを恐れて隠れ住んでいる亜人がかなり居るみたいだ。稀に高位の魔物は意思疎通を測れる事があるらしい。


「よし!それじゃあ行こうか!」



多少不安もあったがそれよりも高揚感がまさっている。今では心強い仲間もいる。


それにせっかくこの世界に来れたのだから楽しもうと思う。

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