第6話
彼女たちと話し合っているとすでに時刻は、午後の6時を過ぎていた。家にはどうせ誰もいないが、2人の男の子はいい加減帰らなければいけない時間らしい。帰り際、碧眼の男の子は笑顔で自分に手を振ってくれた。
「彼、あんなに明るいけど目の前で、両親を殺されてるの。テロだった。武装勢力のクーデターに巻き込まれて、射殺されたのを見たらしいの。彼は子供だから、見逃してもらったみたいで。孤児になった彼を引き取ったのがトップだった。で、1番安全に暮らす事のできる日本にきたの。ここでは、もちろん、あなたや私みたいに思想を持ってくる子もいるけど、ほとんどが戦争孤児や、何らかの理由で、母国で暮らす事のできなくなった子が集まってる。あの子達は、この世界の犠牲者なの。罪もなく奪われて、理不尽に運命に向き合わされる。大人が勝手に作った運命の中で苦しんでる。」
彼女は涙ながらに僕に話してくれた。唇を強く噛み、その厚く魅力的な唇からは少し血が流れていた。戦争孤児なら他にもいっぱいいるだろうけど、彼みたいな子がここにいるのは多分、能力があるからだと思う。能力のある子供を厳選してここに呼ぶ。少し残酷なのかもしれないけど、これができる限界なのかもしれない。
「あ、このことはオフレコでお願いね。あまり個人に踏み込まないのがルールだけど、これを知っておくのと知らないのとでは全く私たちの選択が変わるから。」
ここでいう私たちは思想を持ってここにきた子供のことだと思う。多分、彼らがここにいるのは、僕たちが間違った選択を取らないため。そして、彼らのような子供がいると言うことを忘れないため。
「話はここまで。じゃあ、また今度ね。」
「そうですね。じゃあ、自分もここで失礼します。」
「では、こちらにお願いします。まだやることがあるので。」
僕はボディーガードに連れられて図書室を出た。
モスキートーン 有馬悠人 @arimayuuta
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